国家存続の危機!? 「東ティモール」を救うべく立ち上がる女性たち

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2015年01月15日 11:40  FUTURUS

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「原油安で2015年にはGDP比率20%超の収入減」

2014年晩秋、衝撃的な試算が発表された。“世界一石油に依存した経済”といわれる東ティモールは、同年に始まった急激な原油安局面により膨大な国家収入を失うかもしれない。“GDP比率20%超”という数字の衝撃度は、日本の経済規模に換算してみると、その深刻さがよくわかる。

日本で100兆円もの歳入が突如消失したら、いったいどうなるだろうか?

この重大な現実にすら重い腰を上げられない国家に代わって、これまで社会で虐げられてきた女性たちが力強く立ち上がろうとしている。

東ティモールが抱える構造的問題

東ティモール経済の奇妙さは、その経済指数によく表れている。2011年にはタイと肩を並べるまで東ティモールの1人当たりのGDPは伸びた。

しかし、国民の約7割が1日あたり2ドル未満で暮らすアジア最貧国という矛盾。そんな社会の歪さは、2012年以降のGDP値急落という形で露呈した。わずか3年間で1人当たりのGDPが30%も減少したのだ。

そして2015年、追い打ちをかけるようにGDP比率20%超という歳入減が待ち受けている。

東ティモールの経済は石油が全てだ。石油以外の産業はほぼ皆無。スターバックスが扱うフェアトレード・コーヒーなどが有名だが、経済全体に占める農業部門は僅か数%にしかならない。

インドネシアとの長きに亘る戦いで、国土は焦土と化しインフラは破壊し尽くされた。さらには世代間による文化的断絶も深刻だ。

指導者層で使われる旧宗主国のポルトガル語、占領時代に強制されたインドネシア語、独立後に普及を図った本来の言語テトゥン語、国連統治やインターネットの普及で広がった英語。世代や階級によって話す言語が違う東ティモール社会は、常に相互不信と分裂の危険性をはらむ。


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国家存続の危機

産業を持たない東ティモールが独立国家としてスタートできた背景には、国際支援によるところも大きいが、何と言っても“石油基金”の存在があるだろう。

オーストラリアやインドネシアに利権の大部分をコントロールされてはいるものの、人口僅か120万人の小国には十分な規模のファンドである。

大部分がFRB米国財務省短期債券として運用されているこの石油基金は、近年の原油高という追い風も受けて、2014年には168億ドルまで積み上がった。これは東ティモールの10年分の国家予算に匹敵する。

当初は税収の不足分を補い、教育や福祉といった社会投資をすることがこの基金の目指すところであったが、いつの間にか基金自体を切り崩しながら国家運営をすることが常態となってしまった。こうなると、もう歯止めが効かなくなるのは世の常といえる。

平均で6人の子を持つ高過ぎる出生率は、慢性的な学校教育の不足、若年層の高い失業率となって社会に大きな負担と不安を与える。切り崩した基金の大部分は海外からの食料品・生活用品の輸入と、場当たり的な公共事業へと費やされ、未来への投資は為されぬままだ。

しかも、この唯一ともいえる国家財産は、近い将来の原油枯渇で危機を迎えることがわかっている。このまま切り崩しが常態化すれば、原油の枯渇前に基金自体が枯渇することも……。

この国の未来を変えるために

2015年3月28日に、首都のディリで同国初の開催が決まった世界的プレゼンイベント『TEDxDili』は、ガブリエラとジェニファー、2人の女性が発起人となり、そのほとんどが女性たちの手によって実現することとなった。

TEDxDILI 東ティモール グリーンスクール

東ティモールの女性に関する諸問題は深刻だ。男性による暴力・虐待が日常的に行われ、カトリックの国でありながら自ら命を絶つ女性も少なくない。国会議員には3割の女性議員がいるのだが、一般社会で女性が良い職に就いたり事業を起こすことなど不可能に近い。

幼い頃から家事の手伝いや兄弟の世話に明け暮れ満足な教育も受けられず、平均6人の子供を抱えたのちも農業や家計を支える小商いに追われる日々を暮らす東ティモールの女性たち。50代に差し掛かる頃にはまるで老婆のように見えるという彼女たちの負担は、肉体的にも精神的にも重い。


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だが、新しい世代の女性たちは力強い。海外での留学経験やインターネットで世界と直接繋がったことで、自国が抱える問題に正面切って立ち向かい始めたのだ。

いち早く『TEDxDili』に参加が決まった女性の1人が、サンタナという団体の代表を務めるベラ・ガルヨス。彼女は大統領補佐官という重職にありながら、私財を投じて学校作りに励んでいる。

彼女が構想する東ティモール初の環境教育学校『ルブロラ・グリーンスクール』が目指すのは、自然環境保護への理解と安全な食の提供。

そしてもうひとつ、学校が運営する農園や観光事業を通しての近隣地域の女性たちへの雇用の創出だ。子供たちへの十分な教育と女性の自立こそが社会の未来を変えることができると、彼女は確信している。

アースカンパニー 東ティモール エコスクール

彼女の長年の親友であり、日本でNGOを立ち上げベラの活動を支える濱川明日香さんも、ベラの『TEDxDili』出演に尽力。独立から13年、国家存続の危機にある東ティモール初の『TEDxDili』に、世界から熱い視線が集まるだろう。

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