「二世帯住宅」家庭内不和を避ける設計ポイント

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2015年01月16日 15:00  JIJICO

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二世帯住宅のニーズ高まる。その背景


近年、二世帯住宅のニーズが高まっています。その背景には当然のことながら、いくつかの社会的、時代的な要因があることが考えられます。


(1)「核家族の限界」が次第に明らかに。
戦後、我が国は国の方針もあって、「核家族」を単位とする政策、諸制度が大勢を占めてきました。しかし、そろそろ限界に来ていると思えるような、孤立した個人による犯罪やトラブルが多発しています。


(2)共働き世帯の増加。
これにより、子世帯側からの育児への親の参加希望、親世帯側の育児への参加希望、高齢化に伴う将来の介護への不安が見られます。


(3)特に都市部における子世帯の家の新築に要する経済的負担の過大さ。


(4)東北大震災などの大きな災害に遭遇したこと。
本来あるべき「人は一人では生きていけない。人と人とのつながりや助け合い」といった価値観の大切さが見直されています。


互いに不可侵の領域を確保。共用部分は使用する時間が短い場所に


今回は、二世帯住宅を建設する際の留意点を主に設計サイドから挙げてみます。


■互いに不可侵の領域を確保すること。
互いに干渉すれば際限がなくなって、心理的に安定した生活が成りたたくなります。互いに立ち入らない、安心のできる領域を確保しましょう。


■共用部分は原則として使用する時間が短い場所に。
具体的には、玄関や水回りは使用時間が相対的に短いため、共用できると考えられます。また、共用とする場合は、できる範囲で、広く、質的にも充実したゆとりのあるスペースとしたいものです。


玄関を共用とする場合は、収納もシューズクロークなども含め広く取り、光の入る明るい空間とすると良いでしょう。また、浴室を共用とする場合は、広さと素材の選定だけでなく、敷地の条件が許せばバスコートなどを取ってリラックスできるスぺースとしたいです。


■親世帯の住居の配置がキーポイント。
年齢の高い親世帯は、ともすれば社会から孤立してしまいがちです。よって、玄関の位置や庭からの出入の工夫などの配慮をするべきです。特に介護を要する場合は、車椅子などの出入りを考えたアプローチの位置・寸法の取り方が必要です。また、廊下や便所の寸法も内法で1m以上確保したいところです。


同居するためのいくつかの約束事を決めておくと良い


そして最後に、親世帯と子世帯が同居するためのいくつかの約束事を決めておくと良いでしょう。例えば、お風呂や洗面所を共用とする場合には、利用時間帯をはっきりと事前に決めておきましょう。他には、顔を合わせたくない時や、親世帯が就寝して静かにしてほしい場合のサインの出し方などです。


あまり細かいことまで取り決めておくのは、実際に守るのが困難で有名無実になるので考えものですが、共に生活するためにはきれいごとだけでは済まされません。これだけは守ってほしいということは、あらかじめ決めておくことが肝心です。



(石川 雅洋・一級建築士)

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