東京五輪の選手村が「水素タウン」になることは正しい選択なのか

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2015年01月16日 19:40  FUTURUS

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FUTURUS(フトゥールス)

2020年東京オリンピック・パラリンピックで、東京都は中央区晴海に建設する選手村を水素エネルギーで電力などを賄う『水素タウン』として整備する方針を決めたとの報道が、1月5日に各メディアを賑わせた。

この方針では、現在客船ターミナルやゴミ処理施設などが建っている晴海地区に大規模な水素ステーションを建設し、選手村の電力や光熱を水素で賄おうというものだ。ただし、この方針では水素を水素ステーションで作るのか、それとも他所で作られた水素を運び込むのかは明記されていないようだ。

水素をエネルギーとして活用する理由

水素を町全体のエネルギーとして活用するメリットは、当然ながら環境に配慮している、ということになる。電気を作り出す際に燃料電池を使えば、水素を酸素と反応させるときに起こるエネルギーを電力として取り出せるので、二酸化炭素や窒素酸化物の発生は全くのゼロとなる。

しかし、この水素は自然界では単独で存在することはなく、水(H2O)や炭素化合物(CxHx)つまり油などのかたちで存在しており、水素を単体で取り出すことは当然ながらコストを伴う。

水素は原素記号の一番最初に位置することが示すとおり、原子核と電子が一つずつという非常に不安定なものであり、単体で取り出しても保管は気体となる。

また、実用的に水素を貯蔵しようとすると非常に高圧な気体として貯蔵せざるを得なく、町中にパイプラインを張り巡らせるという構想ではパイプラインの高圧耐性も非常に重要な要素となる。

水素社会の本質とは

水素社会のあり方をオリンピックの際にデモンストレーションしようというのであれば、高い水素代金を払う意味はあるだろうが、それを実現するための施設コストを考えれば恒久的に使わなければ莫大な無駄遣いとなる。

火力や原発の電気を使わないということが本来の趣旨であると思うのだが、いつの間にか水素メインにすり替わってしまったようなプランに見えてしまう。

本来ならば水素を軸にとらえながら太陽光発電や道路交通を使った振動発電など、非燃焼系発電を取り込んだミキシング供給を目指すべきなのではないかと考える。例えば、水素を作り出す際の電力を賄えるだけの太陽光発電を構築するなどの施策が必要なのではないだろうか。

今現在流通している水素は、石油元売が作り出す化石燃料由来の水素である。

水素だけを見ればエコかもしれないが、その水素が作り出される過程まで含めるとエコといえるかどうかは、かなり疑問が残る部分である。

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