成人の心臓は1分間に72回分、1日に10万回、そして一生のうちに25億回を打つといわれる。
心臓手術においては緻密（ちみつ）なプランニングが重要となるようだが、MRIなどではその立体的で複雑な構造はイメージが付きづらく、医師が最適な処置を選択することが困難で、同様に患者への説明も難しくなるそうだ。
しかし今、3Dプリンターがその問題に対して大いに役立っているようだ。
3D模型で最良の治療法を検討
2014年12月にオーストラリアのウィーンで開催された『EuroEcho-Imaging 2014』において、Peter Verschueren氏は3Dプリンターの技術が心臓病を抱える子供の手術回数を減らせる、と発表した。
先天的な心臓病を抱える子供は、最大で4回の手術が必要となるそうだが、3Dプリンターで作成した心臓模型があることで、その回数を1〜2回減らせることができるという。
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なぜかというと、医師が精巧な模型を使って最良の治療法と装置を検討でき、手術室に入る前に細かな手術手順をイメージトレーニングできるからだ。
特に子供の心臓は大人より小さいため、MRIだけでは詳細な情報が把握することができない。どんなに経験豊富な医師も、症状は人によって様々であり状況も毎回異なってくるため例外ではない。そのため何度も開胸し、実際に目で確認する必要があったそうだ。そこで3Dプリンターの出番というわけだ。
年々進化していく3Dプリンターだが、医療現場での活用は頭蓋骨の外科手術から始まり、骨の再形成、そして肝臓などの外科手術にまで広がっていった。しかし、最近までは心臓の再現は難しかったそうだ。それがやっと、細かな血管や筋肉なども再現できるようになり、精巧な心臓模型の作成も可能となった。
4歳の小さな子供の命を救う
最近の事例を紹介する。マイアミの子供病院が行う『The Heart Program』で、Adaenelieという4歳の少女の心臓モデルを構築し、複雑な手順を取りながらも見事手術に成功したという。
Adaenelieは肺静脈還流異常という、4本ある肺静脈からの血液が正しい方向に流れなく症状で、呼吸困難や心不全に陥るおそれがある危険な状態だった。
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既に2度の手術を行っており、解決策も切れかけていた。Adaenelieも弱ってきており、次の3回目の手術は極めて危険になると想定されていたが、そこで3Dプリンターを使った心臓模型が活用されたのだ。
精巧な心臓模型を作るために、CTスキャンしたデータをアトランタにあるAdvancedRPという3Dプリント会社に送り、24時間後には模型が完成したという。
ウェアラブル、バーチャル・リアリティ、そして3Dプリンターなど、最近のテクノロジーの進化はどれも医療に結びつくものばかりだ。
今回紹介した3Dプリンターによる臓器模型をはじめ、他にも人口心臓の小型化、精巧な義手制作などに応用されてきているので、課題は既にあるテクノロジーをどう医療と結びつけるかではないだろうか。
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