ここで紹介するのは、土壌の水分量をモニターできるセンサーだ。そう書くだけではインパクトなんかゼロだろう。
そんなもの昔からあるもので珍しくもなんともないからだ。今回は、そこに使われている技術の方にニュースバリューがあるといっていい。まず電源がいらないのだ。
わずかな電力で作動する
このセンサー『SenSprout』には、ふたつの特筆すべき技術が使われている。その内のひとつがEnergy Harvestingだ。Energyはエネルギー、Harvestingは収穫を意味する。このセンサー、なんと周囲の環境からエネルギーを取り込んでしまうのだ。
Energy Harvestingは、環境中の微弱なエネルギーを利用して電子機器を動かす技術だという。独自に開発した、マイコンの最適な動作周期を動的に自動決定するアルゴリズムのおかげでこれが可能になった。
このセンサーは電池を必要とせず、100μW程度(1Wの100万分の1)の超低電力しか得られない環境でも安定的に動作し続けられるという。
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もうひとつの注目技術は、インクジェットによる電子回路の印刷だ。市販のインクジェットプリンターに銀ナノインクを装填することで、タッチセンサーやアンテナ、回路基板を印刷することを可能にした。それによって、小ロットでも低コストで製作できるようになったそうだ。
この『SenSprout』は、静電容量の変化を検知できるセンサーで、土の中の水分量を測ることができるほか、葉濡れセンサーで降雨も検知できる。
電池交換が不要なのでメンテナンスコストが抑えられるほか、電池の液漏れによって土壌を汚染する心配もない。大規模農業や高付加価値作物の灌漑の最適化、地すべりやがけ崩れのリスク評価などへの応用が期待できるという。
一方で、このEnergy Harvestingとインクジェットによるセンサーの印刷は、さらに幅広い製品に応用できそうだ。消費電力が少なく済むデバイスなら電池すら不要だということになるし、大量生産しなくてもコストが抑えられるのなら、これまでコストの面から実現できなかったモノの製造ができるようになる可能性がある。
また“モノづくり”が大きく変わっていきそうだ。
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