「ヴァンパイア騎士」舞台版 男装女性陣、AKIRA始め、流石のビジュアル

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2015年01月25日 21:42  アニメ!アニメ!

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『ヴァンパイア騎士』(C)樋野まつり/白泉社(LaLa)
高浩美の
アニメ×ステージ&ミュージカル談義
[取材・構成: 高浩美]

■ あり得ない関係でありながらの恋愛、許されないから盛り上がる。
逆らえない運命に翻弄される物語

『ヴァンパイア騎士』は樋野まつり原作。『LaLa』(白泉社)で2005年〜2013年まで連載、単行本は全19巻が刊行されている。
2008年の4月〜6月までテレビアニメ第1期が、同年10月〜12月まで第2期が放送された。主人公の黒主優姫を堀江由衣、錐生零を宮野守、玖蘭柩に岸尾だいすけが演じた。

物語の舞台は全寮制の私立『黒主学園』ここには一般生徒が通う普通科(デイ・クラス)とエリートで美形揃いの吸血鬼(ヴァンパイア)が通う夜間部(ないと・クラス)がある。しかし、夜間部に通う生徒が全員吸血鬼であることは普通科の生徒は知らない。
主人公の黒主優姫は5歳以前の記憶がない。優姫は夜間部のクラス長を務める玖蘭柩に命の恩人として憧れている。実は5歳の頃に玖蘭柩に助けられた過去がある故に、柩に想いを寄せているのである。
彼女は幼なじみの錐生零と共に学園の秘密を守るために風紀委員として守護係(ガーディアン)を務めている人間と吸血鬼が共存する学園。しかし、零は吸血鬼を激しく憎んでいた。彼は幼い頃に家族を吸血鬼によって奪われていた。そして零には誰にも言えない秘密があった……。

吸血鬼モノの物語は数多く存在する。漫画では知られている作品では『ときめきトゥナイト』、『ポーの一族』あたりではないだろうか。映画では古いところでは『吸血鬼ノスフェラトゥ』(1922)、ドラキュラを扱った最古のホラー映画として知られている。
比較的記憶に新しいところでは2012年のジョニー・デップとティム・バートン監督の映画『ダーク・シャドウ』また同年の『リンカーン 秘密の書』は原作は『ヴァンパイアハンター・リンカーン』である。
吸血鬼と人間の恋愛、いわゆる”禁断の愛”。基本的に吸血鬼にとって人間は”餌”である。そういった関係性の吸血鬼と人間。この許されない、あり得ない関係でありながらの恋愛、だからこそ読者(視聴者)は涙する。許されないから盛り上がる。さらに逆らえない運命や人間関係等もあり、そういった要素が絡み合ってのストーリー展開、だからこそ惹き付けられるのである。

この『ヴァンパイア騎士』もこの”法則”があてはまる。ヒロインの黒主優姫は恋愛が成就しないと知りながらも玖蘭柩に惹かれる。錐生零は己のさだめに抗いながらも自己を保っていこうとする。それを取り巻く人間(吸血鬼)達もまた、己の立場やさだめに傷つき悩む。それが絡み合った物語、哀しみと憎しみと愛情が幾重にも重なっている。そして作画だが、出て来るキャラクターが美しく描かれており、そこがファン心をくすぐる。

舞台版は主人公の黒主優姫役に女性アイドルグループ・乃木坂46の1期オーディションに合格後、中心メンバーとして活躍する若月佑美。『第97回二科展』ではデザイン部A部門に芸能人として初めて入選する等、幅広い分野で活躍中である。
その相手役にあたる玖蘭柩にファッション誌『KERA』でモデルを務めるAKIRAがキャスティングされている。表紙登場回数は歴代1位。また、ヴィジュアル系ロックバンド『DISACODE』でボーカルを務め、さらにソロ活動も行っている。近年は『戦国BASARA3』宴式-凶王誕生×深淵の宴-の上杉謙信役で活躍する。
錐生零には同じく男装モデルのルウト。今回のキャストは全員女性。特に男性役は”男装女子”が務める。彼女立ちはそのビジュアルだけでなく、仕草や立ち振る舞いも男性らしい。そういった研究に余念なく、スタイルも完璧。「男の子よりもかっこ良くて可愛い」と若い女性を中心に人気を博している。そういったカリスマ男装モデルたち、ヴァンパイア物はそもそもファンタジー、それにさらに虚構性を加えることになる。

キャストが全員女性で虚構性を強める、という手法は古くは宝塚歌劇団が行っているが、一昨年からミュージカル『美少女戦士セーラームーン』も全てのキャストが女性である。元宝塚トップスターがタキシード仮面、マントさばきが様になっている。
その”逆バージョン”としては古くは歌舞伎、女性を演じる専門の役者・女形が本当の女性よりも妖艶であったりする。また、劇団であるスタジオライフは演出家以外、全てが男性、こちらも本当の女性より可愛かったりするのである。そういった手法を取り入れた『ヴァンパイア騎士』、さぞかし、”麗しい”ことだろう。
\n■ スタイリッシュでかっこよく、程よくコミカルな味付け
直線的なコリオ、凛々しく、熱く、ヴァンパイアたちが魅了する

パイプオルガンの音色が響く。背景にカタカナの文字が浮かぶ。”マッシロ””ユキ”……今回のヒロイン・黒主優姫が一人、ぽつんとしゃがんでいる。それから吹雪の音。優姫は5歳以前の記憶がない。雪の降る日に玖蘭柩に助けられたのだった。そんな生い立ちを象徴的に、シンプルに見せる。
それから一転して激しいロック音楽が鳴り響く。玖蘭柩の登場、スタイリッシュでかっこいい。そしてこの舞台のための楽曲を歌う。これから激しくも熱い物語が展開されるのだ、ということが即座にわかる。たたみかけるようなオープニングだ。原作のテイストを尊重しつつ、疾走感を持って作品世界を表現。全身黒ずくめのダンサーが激しく舞い、踊る。直線的で力強いコリオが世界観に輪郭を与える。

振り付けの腕のみせどころ。そしてアニメ的な手法でスクリーンにキャラクターが次々と紹介され、タイトルロール。それから一転して学園風景。よくあるパターン、ルックスのいい男子学生とそれに憧れる女子学生。一見平和な光景だが、夜のイケメン学生は皆、ヴァンパイア。つまり昼の女子学生は”餌”。もちろん食べるのは御法度。人間とヴァンパイアの平和的関係を築くのが、この学園のコンセプトだ。
ストーリーは原作通り。程よく”コミカルな場面”とそうでない、”ダーク”な場面、”ハードな場面”のバランスがよく観やすい。緩急つけてストーリーは進行する。主人公の優姫はどこにでもいそうな女の子。玖蘭柩に淡い恋心を抱いているが、叶わないことはよくわかっている。切ないが、思春期にありがちな気持ちで共感する。そんな優姫を若月佑美が好演。等身大で、いかにもいそうな雰囲気だ。
優姫と同じ風紀委員の錐生零は優姫を大切に想う気持ちは誰にも負けないが、わざとそっけない態度を取ったりする。”いるいる、そういう男子”といった感じをルウトはさらりと表現。後半、苦悩するところでは心の機微を表現、戦う姿は一転して時には凛々しく、なかなかの芝居巧者。
AKIRA演じる玖蘭柩はひたすらクールでかっこいい。そしてヴァンパイア純血種という設定、どこか品良く振る舞う姿はビジュアル的に美しく、かなり計算してるな、ということをうかがわせる。

ダンサー陣のクオリティが高く、作品世界を時には妖しく、激しく輪郭をつける。無機質で、刹那的な雰囲気、ヴァンパイアモノにふさわしい。男装女性陣、AKIRA始め、流石のビジュアル。宝塚の男役スターの立ち振る舞いは長年の歴史に裏付けられた”型”で様式美が感じられるが、こちらはナチュラル。ちょっとした仕草もさらりとしており、一瞬、華奢な男性?と思う程だ。
アクションもなかなかで皆、型がキマっていたのが印象的。歌唱法も自然で、さほど声を作っている訳でもないのに、男性っぽい。男装女子、人気を博しているのがよくわかる。柿丸美智恵 演じる理事長の黒主灰閻、ボケたりすべったり、期待通りのキャラ、若干おばさん臭な役作りが成功、観客の笑いを誘った。
原作はまだまだあるが、舞台版は区切りのよいところで幕。それから再び幕が上がって、ちょっとしたショウタイム。再びAKIRAが登場し、冒頭で歌った舞台のためのオリジナル曲を熱唱、こういったサービスは観客にはうれしいおまけである。舞台と客席がほどよく近い博品館劇場、このくらいのキャパの劇場にふさわしい演目だ。脚本は徳尾浩司、演出・振付は本山新之助だ。
\nなお、ゲネプロ前に囲み会見があった。登壇したのは若月佑美(乃木坂46)、AKIRA、ルウトの3名。

若月は「(全員女性なので)美しさは出せると思います。零と柩の間で揺れ動く心情を表現出来たら」とコメント。
AKIRAは「全員女性、ミュージカルなので、歌ってダンスして芝居をします。感情を(表に)あらわさないキャラクターなので舞台ではわかりづらいかも」と語る。
ルウトは「女同士で女の子を取り合います。零の垣間見える優しさや思いやりに注目して欲しいです」とコメント。若月は苦労した点は?と聞かれて「明るさです!」とコメント。ちょっと意外な気もするが「稽古で目が死んでるって言われて……最後の方で笑ってるよって言われました」理想の男性像に関しては「明るくない私を受け入れてくれる男性が理想」とコメント。”ありのまま”でいいと言ってくれる男性なら、ということのよう。グループ内では「男っぽいとか男前とか言われる」と語る。
舞台上では”イケメンヴァンパイア”の柩と同じ富貴委員の零に挟まれて、のなんとも”美味しい”状態。「舞台上では恋をしてる……ウフッ」グループで男装女子になれそうなメンバーは?の問いかけに対しては「自分かな?」 
AKIRAは「原作(コミック)、アニメ、舞台、それもミュージカル、かなり魅力的です!」と会見をまとめてくれた。終始和やかで、いろいろしゃべる若月をAKIRAとルウトが何気に微笑みながら進行していった会見。『ヴァンパイア騎士』を地でいってるようで、3人和気あいあい、公演は25日まで。短いのが残念だ。

『ヴァンパイア騎士』Supported by 青山メインランド
http://www.nelke.co.jp/stage/vn/
2015年1月21日(水)〜25日(日)
博品館劇場
原作: 「ヴァンパイア騎士」樋野まつり
脚本: 徳尾浩司
演出・ 振付:本山新之助 

[キャスト]
黒主優姫: 若月佑美(乃木坂46)
玖蘭枢: AKIRA
錐生零: ルウト
藍堂英: 喜屋武ちあき
一条拓麻: 天翔りいら
架院暁: oni
支葵千里: 松本愛
紅まり亜: 荻野可鈴(夢みるアドレセンス)
黒主灰閻: 柿丸美智恵
緋桜閑: 渡辺舞

『ヴァンパイア騎士』
(C)樋野まつり/白泉社(LaLa)

このニュースに関するつぶやき

  • 若月から「千秋楽、さみしいな」というモバメが来た。 その直後、玲香から「今日はうれしいことがあったよ♪」ときた。 相変わらずのポンコツっぷり。
    • イイネ!1
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