パナソニックとペットボトルを操る団体が「未来のエネルギー賞」を受賞

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2015年01月27日 11:40  FUTURUS

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FUTURUS(フトゥールス)

アラブ首長国連邦(UAE)政府が設立し、同国の国営企業マスダール社が運営する、再生可能エネルギーおよび持続可能性の分野での卓越した成果に対して贈られる国際的な賞、『ザイード・フューチャー・エネルギー賞(ZFEP)』。

2008年に始まった同賞において、日本の存在感は大きい。2009年にトヨタが企業として初めて受賞。また2013年から新設された高校部門では、2014年に東京の富士見丘高校がファイナリストに選出された実績を持つ。

そして2015年、首都アブダビにて開催された授賞式でパナソニックが大企業部門最優秀賞を受賞。その受賞の背景と、シンプルな発想と技術でフィリピンのスラム街に光をさした団体を紹介する。

パナソニックの受賞

UAE建国の父、初代大統領ザイード・ビン・スルターン・アール・ナヒヤーンが唱えた“脱石油社会へ向けての再生可能エネルギーと持続可能性を追及した社会作り”。

その遺志は現在建設中の実験的未来都市、ゼロ・エミッション、ゼロ廃棄物を目指す『マスダールシティ』に引き継がれている。そして、その遺志の実現を世界規模で促すためにZFEPは創設された。

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パナソニックは、エコナビ製品や太陽光発電システムHIT(R)など、“創エネ・蓄エネ・省エネ”や節水に貢献する幅広い商材とそれらを支える技術が高い評価を受けた。

また『Fujisawaサスティナブル・スマートタウン(Fujisawa SST)』にてサスティナブルな街づくりを地域行政やパートナー企業と共に推進。

一貫性のある経営理念にもとづいたこれらの活動が総合的に評価され、今回の受賞に至った。


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アブダビ首長国皇太子兼連邦軍副最高司令官・ムハンマド・ビン・ザーイド・アール・ナヒヤーンから表彰状を手渡され、パナソニック代表取締役副社長・山田 喜彦氏はこう述べた。

栄誉あるザイード・フューチャー・エネルギー賞を受賞し、大変光栄に思っております。当社は事業を通じて社会に貢献するという創業以来の理念を追求し、持続可能な社会の発展に貢献してきました。

創業100周年の2018年に向け、家電、住宅、車載関連など様々な事業領域で、お客様へのお役立ちを拡げ、当社のブランドスローガンである『A Better Life, A Better World』を具現化してまいります。

フィリピンのスラム街に光を

a liter of light zayed future prize ザイード・フューチャー・エネルギー賞

それ他の受賞は、個人部門でアル・ゴア氏、中小企業部門でM-KOPA SOLAR、そしてグローバル・ハイスクール部門では南北アメリカ大陸『Munro Academy(カナダ)』、欧州『Petru Rares National College(ルーマニア)』、アフリカ『Waterford Kamhlaba United World College(スワジランド)』、アジア 『Addu High School(モルディブ)』、オセアニア 『Melbourne Girls’ College(オーストラリア)』となった。

なかでも注目は、NPO/NGO部門最優秀賞を受賞した『LITER OF LIGHT』。フィリピンを中心に活動する団体My Shelter Foundationからスピンオフしたプロジェクトだ。

首都マニラ周辺に点在するスラム街には、電気が通っていなかったり、電気料金を払えない人々が多い。コンクリートブロックだけで囲まれた家やバラック小屋が極度に密集するようなところでは光さえも差し込まず、昼間でも家の中は真っ暗。

そんな暗闇のスラムに明かりを灯そうと『LITER OF LIGHT』は始まった。

使用するのは、どこにでもあるペットボトル。トタン屋根に小さな穴を開けて、そこにたっぷりの水と少量の塩素を入れたペットボトルを差し込み、あとは隙間を埋めるだけ。するとペットボトルに差し込んだ光が水によって拡散され、驚くほどの明るさを生み出す。


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現在では改良が加えられ、ペットボトルの上部に太陽光パネルと蓄電池が付いたものが使われいる。昼間に蓄電しておいた電力を使い、ボトル内に付けられたLEDを灯すことで夜間も室内が明るくなった。

ペットボトルというどこにでもあるモノを使い、シンプルな発想と技術で大きなインパクトを生み出す。それが高く評価され、今回の受賞へ至った。

“才色+熱”兼備のファウンダー

この活動を指揮するのは、マニラ生まれのIllac Diaz。ミス・ユニバース初代フィリピン代表を姉にもつIllacは、学生時代にモデルや俳優としても活動した経験をもつ。大学時代にソーシャルワークに興味を持ち始め、MITやハーバードにも留学。帰国後は様々な社会事業に関わるようになる。

フィリピンは自然災害の多い土地。台風、地震、津波、火山の噴火……。なかでも近年深刻なのが大型台風の増加で、毎年のように多くの命を奪い、社会に大きな被害をもたらす。Illacがまず最初に始めた事業が、災害後の簡易建築、シェルター作りだった。

被災後速やかに安全な住居を人々に提供することは非常に重要だ。しかし、何よりも学校の復旧が大事だとIllacは考えた。大型の台風が来るたびに学校が破壊され、長期に亘り満足に勉強できない子供が多発していたからだ。そこで、竹や土嚢を使って簡単に作れる学校を考案し、フィリピン各地に数多く建設した。

しかしある日、Illacはもっと低コストで学校を作る手段を見つけた。しかもそれは、フィリピン社会が抱える大きな問題の解決にも貢献できる一石二鳥のアイデアだった。

その建築資材とは、ゴミとして捨てられるペットボトルだ。


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このアイデアが後に『LITER OF LIGHT』へと繋がることとなった。ゴミとして捨てられていたペットボトルが、時に人々を守る家となり、時に人々を明るく照らす光となる。

どこにでもあるモノをシンプルに使って最大限のインパクトを与えることこそが、貧困地域の問題解決には必要不可欠だ。フィリピンの社会事業界のカリスマ、Illacの挑戦はまだまだ続く。

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