「炭水化物抜き」は悪玉コレステロールを増やしてしまうリスクも
(帝京大学臨床研究センター 寺本民生センター長)生活習慣病の治療では、お薬の服用はもちろんですが、運動や食事療法も重要な要素です。特にメタボ気味の人は、まず体重を落とすことが大切ですが、一部のダイエット法は脂質異常症を悪化させるリスクを伴うといいます。
帝京大学臨床研究センター センター長の寺本民生先生は、「炭水化物制限食というのが話題になっています。体重が減る、糖尿病にも良いと言われますが、炭水化物制限食ではコレステロール、脂質の摂取が多くなるのでLDLコレステロールは悪化の方向に向かってしまいます。患者さん一人ひとりにあった食事療法を取り入れることが大切です」と注意を呼びかけました。
生活習慣病の1つである脂質異常症は、血液中のLDLコレステロールや中性脂肪が多すぎたり、HDLコレステロールが少なすぎたりする病気で、過去には高脂血症とも呼ばれていました。治療しないでいると自覚症状のないまま動脈硬化が進み、脳梗塞や心筋梗塞など命に関わる病気につながる恐れがあります。30歳以上の日本人ではおよそ3割が脂質異常症の患者かその予備軍である(厚生労働省「平成22年国民健康・栄養調査」より)にも関わらず、その半数が現在治療を受けていないといいます。
治療に対する知識・意識が低い
大手製薬会社の塩野義製薬が、糖尿病、高血圧症、そして脂質異常症の患者さんを対象に「T-CARE Survey Plus」という調査を行ったところ、脂質異常症患者さんのおよそ7割が高血圧や糖尿病を合併していたことが分かりました。
また、生活習慣病を合併している人は、脂質異常症だけを発症している人よりも病気のことを深刻にとらえ、治療方針の理解や納得度が向上する傾向にあるそうです。しかし、これは逆の視点からみると、脂質異常症については、治療に対する知識や意識が低いことを意味しています。「自身の脂質異常症の症状」を理解している人は、4割しかいなかったというのです。
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脂質異常症をはじめとする生活習慣病は、治療の継続が大切ですが、すぐに重篤な症状が現れないことなどから、治療を中断してしまう人も少なくありません。こうした患者さんについて寺本先生は、「治療はマラソンのようなもの。ゴールテープがないところに向かって走ることは、なかなかできないことです。お医者さんと一緒にゴールを、目標値を設定して、治療に取り組むということが大切です」と語ります。
一人で完遂するのは難しい生活習慣病の治療。今の治療が厳しいと感じる、継続が難しいと思うときは、かかりつけの先生に胸の内を明かし、継続できる治療法を一緒に考えてみてはいかがでしょうか。(QLife編集部)
外部リンク
- 塩野義製薬株式会社 プレスリリース
http://www.shionogi.co.jp/company/news/2015/qdv9fu000000mt9d-att/0127.pdf - QLife特集 コレステロールってそもそも何ですか?
http://www.qlife.jp/square/category/feature/lh