スピードや高さの限界にクールに挑戦し、ユーモアあふれる精神で不可能を可能にしてしまうエクストリーム競技は、世界の多くの人々を魅了し、競技人口もその商業規模も拡大の一途だ。
そしてエクストリーム競技人口の対国民人口比率が世界一といわれるのが北欧フィンランド。そんな同国で今最も話題となっているのが、子供たちへのエクストリーム教育だ。
エクストリーム競技を基にした施設が大ブーム
「時には羽目を外し、無茶なことにも挑戦してほしい」と願う親たちのニーズに応え、エクストリーム競技を基にした遊びを体験できる施設がフィンランドでは目下大ブーム。ついには、それを取り入れた保育園も展開されることになった。
この背景には、フィンランドのお国柄と、今や国民的ヒーローとなったDUDE(デュード:愛すべき大バカ野郎)な4人組の生き様が影響しているといえるだろう。
お国柄〜愉快なフィンランド人
森と湖の国フィンランドの国民イメージは、“無口で内向的”とされている。しかし、それを真に受けてはいけない。彼らはそういったイメージで外国人にネタにされることを楽しんでいる節があり、自分の本当の姿と違う架空のイメージを他者に植え付けることを楽しんでいるかのようだ。
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そんなフィンランド人の本当の姿を知るには、3つの方法があるという。
一緒にビールをたらふく飲むか、サウナや湖で一緒に裸になるか、そして、乗り物のハンドルを握らせるか、だ。
お酒が入ったり裸同士の付き合いになると、彼らは饒舌になり、ジョークを連発する。まるで素面の時や服を着ている時の姿が仮の姿だといわんばかりに。そして大自然のなかでひとたびハンドルを握ると、穏やかだった彼らは別人になる。
人口500万人程度の小国にも関わらず、フィンランドは世界的ドライバーを多く生んでいる。F1チャンピオンも2人輩出し、オフロードレースのラリーでもフィンランド人は大活躍だ。
自動車だけには限らない。板切れ一つあれば、彼らの血を騒がせるには十分だ。スキーやスノーボード、スケボーなどエクストリーム競技の世界でも、フィンランド人のスピードにかける情熱と、危険をものともしない強靭なハートは一目置かれる存在だ。
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また、エクストリーム競技にはユーモアを貴ぶ精神文化もある。日本でも人気となったエアギターをはじめ、奥様運び選手権、携帯電話投げ選手権、裸でアリの巣に座る選手権など、フィンランドには多くの“おバカ”なエクストリーム競技が存在する。
国土の3分の1が北極圏という“極限”に近い環境で生きるフィンランド人の体内には、極端な環境に身を置き、そんな自分を自虐的に楽しもうというDNAが脈々と受け継がれているようだ。そしてそれがテレビの世界に奇跡のように具現化されたのが、人類最北のDUDEな4人組、『The DUDESONS(デュードソンズ)』だ。
エクストリームな4人組〜フィンランドから世界へ
小学校からの親友であったJARPPI、JARNO、HP、JUKKAの4人は、多くの少年たち同様スケボーやマウンテンバイク、スノーボードに夢中になり、自分たちで技の映像を撮ってはビデオに編集し、友達間で回して楽しんでいた。凄い技の映像も人気があったが、豪快に失敗した時の笑える映像はもっと人気があったという。
高校卒業後、町のケーブルTV局で働き出したJARNOは、これまで自分たちが撮り溜めてきたような映像がお金になることに気が付いた。2000年に始まった彼らのビデオを流す番組は、過激なスタントと下ネタたっぷりのユーモアで瞬く間に町の話題に。一年後には、全国局で放送が開始された。
北極圏にもほど近いところに広大な農場を手に入れた彼らは、そこを壮大な遊び場『DUDESONS RANCH』と名付け、よりスケールの大きな捧腹絶倒スタント映像を制作し始める。
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病院送りや警察沙汰、大自然のなかで美女たちと全裸で戯れるなど、彼らの心身ともにエクストリームな姿は若者たちだけでなく、オトナたちの心の奥深くに眠る“フィンランド魂”にも火を付けた。
2003年には世界展開を見据えて英語版の制作も開始。2006年にはアメリカとオーストラリアで英語版放送がスタートする。
2007年には世界22か国で放送され、フィンランドのテレビ番組史上新記録を樹立。2010年には150か国で放送されるに至った。この年MTVと1話につき約5,000万円でアメリカ版独占契約。わずか数年でフィンランドの国民的スターから、世界の“おバカ”スターへと階段を駆け上った。
青少年教育の看板に
その後も多数のテレビ番組賞を受賞。ついにはフィンランドの『いじめ撲滅キャンペーン』の顔となり、国内の学校を訪問してはジョークの講習を“体を張って”行った。
これにより子供たちの間でのアイドルの座は不動となった。2014年には記念切手も販売される。
切手シートのブックレットには、彼らの掲げるジョークの掟が記されている。
「君より弱いものをからかっちゃいけない」「君が心から笑えないものはジョークじゃない」「いつも同じ人をからかっちゃいけない」「いじめに対して決して目をつぶらない」
スポーツとユーモアを通した教育を
そして同年、彼らはホームタウンであるSeinäjoki(セイナヨキ)に、彼らの遊び心が凝縮されたエクストリーム競技体験テーマパーク『DUDESONS ACTIVITY PARK』をオープンさせた。
親子連れからエクストリーム競技のプロを目指す子供までが一年を通して楽しむことができるこの施設は、夫婦共に陸上競技の元オリンピック選手であるフィンランドスポーツ界の英雄2人がディレクターとなり、多くのエクストリーム競技の現役選手がコーチを務める。
このような施設は、雪上エクストリーム競技のパークデザインを手掛けるReiliseppo社によって、2012年頃よりフィンランド国内に次々と作られ始めた。『DUDESONS』の4人も、彼ら自身が開発を手掛けたフィットネス型ゲームやアトラクションを提供し、マスコット的な存在としてこのプロジェクトに参加。施設の国内展開を成功させた彼らの功績は大きい。
また、彼らは保育園事業にも参入し、彼らのテーマパークにデイケアセンターを併設。今後エクストリーム要素とユーモア精神たっぷりの幼児教育を国内に展開することを発表し、フィンランド国民のみならず、世界のDUDEたちを驚かせた。
日本では“サンタとムーミンとオーロラの国”としかイメージされないフィンランド。だが今や、エクストリーム教育最先端の国として、世界から熱い視線が注がれている。
国家キャンペーンの顔となり、記念切手まで発行され、教育事業にも乗り出した4だが、最新番組でも相変わらずの全裸放送を行うなど、DUDEな魂は決して失うことはない。