染色体のテロメアを伸ばす手法で「若返り」が本当にできてしまいそうだ

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2015年02月05日 11:40  FUTURUS

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FUTURUS(フトゥールス)

近年の科学技術の進歩は、20世紀には考えられなかったようなことを次々と可能にしているが、いよいよ人類は禁断の領域に足を踏み入れつつあるのかもしれない。

スタンフォード大学で、あくまでも研究室内で培養されたものではあるが、人間の細胞の“若返り”が可能になったという研究発表がなされた。

細胞分裂の能力を向上させる

テロメアを伸ばすタンパク質をエンコードされたRNAを培養中の人間の細胞に供給することで、細胞分裂の能力が大幅に向上したというのだ。

もう少し詳しく説明しよう。ただし、かなり専門的な分野なので、用語の使用が厳密でないかもしれないが、そこはご了承いただきたい。

テロメアというのは、われわれの染色体の先端につくキャップみたいな部分だ。この部分は“若さ”と密接に関連している。若いうちは、テロメアは8,000〜10,000ヌクレオチド分の長さがあるが、細胞分裂を繰り返すたびに短くなっていく。そしてある程度の短さになると細胞分裂は止まる。これが老化だ。

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しかし、同大学の研究チームは、約1,000ヌクレオチド分のテロメアを伸ばす方法を見つけたという。つまり、そのぶん人間の細胞を若返らせることができるというのだ。これは人間の人生でいうと何年ぶんにもあたる。

通常の培養細胞に比べて、皮膚細胞は28倍も細胞分裂

研究チームがテロメアを伸ばすために使ったのは、修飾をほどこした伝令RNAだ。このRNAはDNAの遺伝子から細胞のなかの“タンパク質工場”に“指令情報”を運ぶものだが、実験に使われたのはテロメア逆転酵素(テロメラーゼという酵素の成分)のためのコーディング領域を持たされたRNAだ。

このテロメラーゼは精子や卵子となる幹細胞において発現するもので、細胞分裂してできた次の世代の細胞においてもテロメアを良好な状態に保ってくれる働きがある。このテロメラーゼは幹細胞以外の細胞においてはわずかしか発現しない。

この作用を起こす修飾RNAを、培養している人間の皮膚細胞と筋肉細胞に適用したところ、テロメアは約10%以上にもあたる1,000ヌクレオチド分伸び、通常の培養細胞に比べて、皮膚細胞は28倍、筋肉細胞は3倍以上も細胞分裂を起こしたという。

この新しい手法にはもうひとつ大きなメリットがある。効果が一時的なのだ。修飾されたRNAの効果は約48時間でなくなり、いちど伸びたテロメアは、その後はまた以前のように分裂するにしたがって短くなる性質をとりもどす。したがって、無制限に伸び続けることはない(無制限に伸び続けると癌のリスクが高まって危険なのだ)。

現在、研究者たちは、様々なほかの種類の細胞に関しても研究を続けている。この技術は、老化による病気や、衰弱を起こす遺伝性の病気の対策として期待される。筋ジストロフィーや糖尿病、心臓病へも応用できるかもしれない。

そして、究極的には人間の“若返り”を可能にしてしまうかもしれない。もしそれが可能になったとき、われわれはどうするのだろう? そしてどうするべきなのだろう? そろそろ考えるべき時期が来ているのではないだろうか。

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