平成28年度から、契約電力50kw未満の家庭や商店などの小規模需要家にも“電力自由化”が享受される。今までは地域独占としていた旧来の電力会社以外の電力事業者からも、電気が購入できるようになるのである。
スマホの通信会社を選ぶような感覚
旧来の電力会社では原子力発電による電気が含まれる場合もあるが、それがイヤであれば、割高かもしれないが自然エネルギーといわれる太陽光発電や風力発電による電気を購入できるようになるのだ。
また、地域限定かもしれないが、発電所を有した工場からの余剰電力を、その工場の周囲に格安で販売するということも考えられる。
つまりは金額、発電方法などで電力事業者を選択できるようになるのである。それこそスマートフォンの通信会社を選ぶような感覚で、様々な電力会社を選択できるようになるのである。
ただし、既存の電力会社から新しい電力事業者への切り替え手続きが非常に複雑であったなら、「面倒くさいから今のままでいいや!」ということにもなりかねない。むしろ既存の電力会社とすればそのほうが都合がいい。そこで『スイッチング支援システム』というものが重要となってくるのだ。
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契約を切り替える手続きをスムーズにする
電力広域的運営推進機関というものが平成27年度、つまり今年の4月1日から運営を開始する。
その名称だけを見ると何を行う機関かはよくわからないと思うが、この機関こそ契約電力50kw未満の家庭や商店など、小規模需要家にも電力自由化が享受されるための『スイッチング支援システム』を開発、推進、運営する機関なのである。
既存の電力会社・電気事業者と小規模需要家の間には、送電網が必要となる。この送電網は今のところ既存の電力会社が運営する送配電事業部門(一般送配電事業者)となるが、この送電網と連携して、既存の電力会社から新規に電気事業者を小規模需要家が切り替えて契約する際に、スムーズにその切り替え(スイッチング)が行えるようにする仕組みが『スイッチング支援システム』である。
簡単な骨子は、新規に契約する電力事業者が需要家から申し込みを受けた際に、スイッチング支援システムを使ってその需要家の電力使用状況の情報を入手。そして、需要家のところへ電力を送り届けるための“託送供給”の変更を、送配電事業者に依頼。
この契約を切り替えるスイッチングの一連の手続きを、同一のシステム上で完了させるというものだ。
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これらのシステムを電力広域的運営推進機関では平成28年4月1日より運営するとしている。そのためには既存電力会社や電気事業者、一般送配電事業者も同じシステムを設置する必要があり、その標準化も含めてのシステム構築を電力広域的運営推進機関は行うこととなる。
これらのシステムが骨子の通りに稼動すれば、スマートフォンや携帯電話のMNP(モバイルナンバーポータビリティ)よりも簡単な手続きで、電力会社、電気事業者を選択することが可能になるのである。