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「ヒトのゲノムがすべて解読された」という報道がされたのは2003年だ。ゲノムというのは
現代主流となっている分子生物学的解釈によれば、ある生物種を規定する遺伝情報全体(『デジタル大辞泉』より抜粋)
のこと。ヒトのゲノムを最初に解読するために要した期間は13年だったという。
しかし、それから10年以上が過ぎ、すでに数日で個人のゲノムを読み取る技術まで確立している。そしてアメリカのNationwide Children’s Hospitalの研究者が、その読み取ったゲノム情報を“病気の原因を突きとめるために”分析する時間を、一気に短縮するソフトウェア技術を発表した。
読み取ったゲノムは分析しないと役に立たない
読み取ったゲノムのデータというのはあまりにも膨大で、 そのまま役に立てることはできない。読み取ったナマの遺伝子情報のなかから病気の原因になる異状箇所を発見しないといけないのだ。そして従来その作業には週単位の時間がかかっていた。
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しかし、Nationwide Children’s Hospitalの研究チームは、その時間を90分にまで短縮する『Chuchill』というソフトウェアを開発した。
このシステムは、膨大なナマの遺伝子情報のなかから、完全に自動化されたプロセスにより、医学的な解釈ができる形で遺伝子の変異情報をリストアップできる。分析の時間は大きく短縮したにもかかわらず、データの信頼性は損なわれず、結果は100%再現性があるという。
![Genom02](http://nge.jp/wp-content/uploads/2015/02/Genom02-690x431.jpg)
このシステムは、アメリカ国立標準技術局 (NIST)において、ほかの情報処理方法と比較テストされ、99.66%という高い診断有効性が証明されている。
「われわれNationwide Children’s Hospitalでは、小児科医療の研究や治療における様々な分野に遺伝子治療を役立てたいという目標を持っています。
たとえば、単一遺伝子疾患は新生児にとっては致命的なものになりえます。そのため、われわれは、診断基準、再現性、正確性を損なうことなく極めて早く結果を出せる遺伝子診断の方法を確立することを第一の目標としています。
それができたら、より多くの人々の遺伝子分析に適用していくことになるでしょう」
と、研究チームのホワイト博士はコメントしている。
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クラウドを使ってデータのやりとりが可能
このソフトウェア『Churchill』の集団への適用能力をアピールするにあたって、同研究チームはAmazonウェブサービスの教育研究助成金を受ける権利を獲得した。
そして『Churchill』は、Amazonウェブサービスのクラウドコンピューティングのシステムを活用して、全世界から集められた1,000を超えるゲノムのサンプル情報を分析し、何百万もの遺伝子異状を見つけ出してみせた。
この『Churchill』のアルゴリズムは、オハイオ州コロンバスの企業GenomeNextにライセンスが与えられている。ユーザーはこの企業に全ゲノムデータを送ると、短時間に、比較的安価で、遺伝子の異状、さらには病気の原因を突きとめることができる注釈付きの分析済みデータセットを出してもらえるのだ。
このようなシステムが普及すれば、遺伝子を原因とする病気の研究がさらに進み、その治療法も大幅に進歩することが考えられる。
iPS細胞の技術などとも合わせて、近い将来、遺伝子治療が臨床レベルで飛躍的な進化を遂げることになるかもしれない。
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