赤ちゃん言葉の方が言葉を覚えやすい?
母親は赤ちゃんに話しかけるとき、赤ちゃん言葉を使ったり、文を短くしたりするなど、話し方を明らかに変えています。これまでの研究では、この独特な話し方には「母親は赤ちゃんに向けてその言語の音を一つひとつはっきり発音しており、それによって赤ちゃんがその音を区別しやすくなる効果がある」と考えられ、定説として広く知られていました。
ところがこの定説は、いくつかの限られた音を選んで比較した小規模な研究結果から結論付けられたものでした。そこで、理化学研究所の研究チームが従来にない大規模な音声データを用いて、この、「赤ちゃんと会話するときの音声は、大人同士で会話するときの音声よりも明瞭である」という定説に関する検証を進めました。
定説を覆す結果!大人と話すときの方が「明瞭な音声」
今回の研究では、日本人の母親22人を対象に、自分の赤ちゃん(月齢18か月から24か月まで)と自由に遊んでいる状況と、実験スタッフ(大人)と会話をしているときの音声を利用。どちらが明瞭な音声で会話が行われているのかを比較しました。どちらが明瞭な声で話しているのかについては、例えば、赤ちゃんに対する「た」と「だ」の差と、大人に対する「た」と「だ」の差を数値化して比較し、その差の大きい方が明瞭な音声としました。
その結果、大人と話しているときの方が、赤ちゃんに向かって話しているときよりも明瞭な音声で話していることが明らかになりました。つまり、先の定説が成り立たない可能性が示されたのです。
今回の研究では、母親がなぜ話し方を変えるのかまでは明らかになっていません。最近は、「赤ちゃんの注意を引くことでコミュニケーションや認知機能を高める役割があるのでは?」という仮説が支持されており、今回の研究結果もこの仮説を支持するものとのこと。研究グループは今後、母親の赤ちゃんに対する発話の意義や役割について研究を進めることで、赤ちゃんが言語を習得する過程の解明につながるのでは、と期待しています。(笹田久美子)
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