2014年2月、ソニーはVAIOブランドのパソコン事業を売却、テレビ事業を分社化することを発表した。日本を代表するメーカーとして歩を進めてきた同社にとって、これらの事業からの撤退は苦渋の決断だったろう。
しかし、時代は予断を許さなかったようだ。2015年2月18日、ソニーは2015〜2017年度の中期経営方針は発表。高収益企業への変革に向け、株主資本利益率（ROE）を最重要の経営指標とし、 収益性重視の事業運営を徹底することを宣言した。
そして2015年10月を目処に、オーディオ・ブルーレイ機器を手がけているビデオ＆サウンド事業も分社化することも発表。この事業にはウォークマン部門も含まれている。また、スマートフォン・タブレットを抱えるモバイル・コミュニケーション分野は他社との提携も臭わせている。
事業ごとに戦略を明確化
今後の3年間の利益成長を牽引していく“成長牽引領域”にデバイス分野、ゲーム＆ネットワークサービス分野、映画分野、音楽分野を。
市場の拡張は望めないものの、利益と投下資本効率の最大化を図れる“安定収益領域”にイメージング・プロダクツ＆ソリューション分野、ビデオ＆サウンド事業を。
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投下資本を抑え、安定した利益を確保できる事業構造を構築する“事業変動リスクコントロール領域”としてテレビ事業、モバイル・コミュニケーション分野を置くなど、事業ごとに戦略を明確化するとのこと。
2012年、平井一夫社長は『One Sony』というスローガンと共に、ソニー復活を象徴するような製品・サービスの投入を約束し、事実4K超短焦点プロジェクターや超高感度フルサイズミラーレスなど、イノベーティブなプロダクツがリリースされた。
しかし、これらのアイテムは主にイノベーター、そして一部のアーリーアダプターにフォーカスを合わせたグローバルニッチなプロダクトであり、決してマジョリティに向けたプロダクトではない。そして今までのソニーは、これらの“It’s a SONY”なアイテムですら多くの収益を上げることを目的としていたフシがある。
分社化、事業売却のメリット
2月16日、2014年7月にVAIOブランドを引き継いだVAIO株式会社は、初めての社内開発・社内生産モデル『VAIO Z』、『VAIO Z Canvas』を発表した。前者は18万9,800円から、後者は20万円台後半と高価な価格帯ではあるが、非常に高スペック。
従来のPCではストレスを感じていたアーリーアダプターの労働時間を短縮する目的で開発されたモデルだ。
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過去、パソコン事業がソニーにあった頃も、尖った一部のユーザーに向けたモデルが多く誕生していた。しかし、市場の変化と共にアーリー／レイトマジョリティが好むスタンダードなモデルに集約していった。
高い事業目標を課せられているとしたら、その判断も間違いではない。しかし、市場規模が移り変わりゆくなか、「昔はこんなに売り上げが上がっていた」との言葉は足かせにしかならない。
VAIO株式会社の発表会を見て、パソコン事業においては別会社となることで意思決定スピードが改善し、企業としての姿勢をイメージづけるモデルの開発が行えるようになったと感じた。
また、外部との自由な連携が行えるようになったメリットもあるだろう。ソニー時代は直接のライバルだった、キヤノン株式会社とのコラボレートは心が躍るものだった。なお、VAIOの販路はソニーが受け持っており、VAIO株式会社とソニーとの関係性が良好な点も見えている。
分社化しての、ソニー子会社としての立場だと、VAIO株式会社ほど自由な戦略はとれないかもしれない。しかし、ビデオ＆サウンド事業は今までにもニッチかつインパクト大なアイテムを世に送り出してきた。
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今までよりもフレキシブルに動けるようになるのであれば、ソニーグループ唯一の商品設計専門会社ソニーエンジニアリングのように、ソニーのDNAを感じさせるモノが次々と登場するのかもしれない。いちソニーファンとして、期待したい。
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