“食の安全”が叫ばれるようになって久しいが、消費者は行政当局や世界保健機関(WHO)といった機関が安全性を認めた範囲内であっても、食品添加物が含まれていないものを選好する傾向があるそうだ。
そんななか、アメリカのネスレは2月17日、大手製菓メーカーとして初めて人工香料や着色料の使用を取りやめると発表し、注目を集めている。
250以上のチョコレート商品が対象
ネスレは2015年末までに、ネスレ、クランチ、バターフィンガーといった同社の10ブランド、250以上のチョコレート商品で使われている人工香料、およびアメリカ食品医薬品局が認めている『赤色40号』や『黄色5号』といった着色料を取り除いていく取り組みをアナウンスした。
バターフィンガーであれば『赤色40号』の代わりにベニノキから抽出されるアナトー、クランチならバニリンという物質の代わりに天然のバニラの香り、といった具合に人工的な原料は自然から摂られたものに順次置きかえられる。
変更後の商品は2015年中頃から販売店に並ぶとしており、パッケージには“No Artificial Flavors or Colors(人工香料、着色料なし)”と明記されるようだ。
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Doreen Ida社長は「私たちはお菓子の消費者が、広がりつつある、人工的な成分がより少ない物を好むトレンドに興味を持っていることを知っている」とし、今回の決定が「画期的だ」と自信を強めている。
消費者は人工添加物のない商品を嗜好
Ida社長によると、米ネスレが調査を行った結果、アメリカの消費者は人工香料や着色料の使われていないブランドについての知識を持ち、そうしたブランドの商品を好むことがわかったという。
マーケティングリサーチ会社ニールセンが行った調査でも、60%以上のアメリカ人が購入する食品を決定する上で「人工着色料や香料がないことは重要」と回答したという結果が出ており、こうしたことが今回の決定につながった。
これまで同様の味や見た目を維持するためには、75以上にもわたるレシピの変更が必要になるが、担当部門のマネージャーLeslie Mohr氏は「消費者のブランドへの期待が一番の優先事項」だとして、妥協しない意向を示している。なお、いずれは新発売される商品やグミなどチョコレート以外の商品へも同様の取り組みを広げていくということだ。
このアメリカの大手製菓メーカーの決定をきっかけに、日本国内でも今後同様の動きが起こる可能性は十分に考えられる。食品メーカーが消費者の潜在的な購買動機を先取りすることで、メーカー、ユーザー双方にとって有益な結果が生まれるのではないだろうか。
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