事前に見積もることが困難な医療費
医療保険などに加入する際、どの程度の医療費を考慮しておくべきか悩む人も多いのではないでしょうか。しかし、この先どんな病気になるのか、そしてどのくらいの治療費が必要になるのかを事前に見積もるのは困難です。そこでニッセイ基礎研究所は、がん患者が受診をした場合の医療費について、レセプトデータに基づいた調査・分析を行いました。
レセプトとは、各医療機関が健康保険組合などに医療費を請求するため、患者が受けた診療について患者ごとに毎月発行している診療報酬明細書のこと。レセプトデータを分析することで、データを取得可能な全期間の患者それぞれの受診状況や医療費を知ることができる、発症から期間別に受診状況や医療費を知ることができる、ある患者集団の入院日数や医療費などの平均値だけでなく分布を知ることができるなど、さまざまな情報を調べることができます。
高額療養費制度を用いても、自己負担が117万円にのぼることも
今回の分析では、高額療養費制度を考慮する前の医療費と、高額療養費制度を考慮した場合の自己負担額が示されました。高額療養費制度を考慮する前では、受診開始直後の医療費が最も高く、2年目以降は1年目と比べて低くなりました。また発症から2年目以降は、1年目と比べて医療費がかかる患者とそうでない患者とに分かれる傾向にありました。
一方、高額療養費制度を考慮すると(※)、1年目は全体の62%が同制度の対象となっており、自己負担分の最高額は117万円で、平均は28万円に。2〜5年目は制度の対象が26%に下がり、自己負担分の4年平均の最高額は99万円で、平均は7万円になりました。(※標準報酬月額が28万円以上53万円未満の世帯を仮定して試算)
ただし、レセプトで扱う医療費は保険診療のものだけで、先進医療など保険外診療による治療費は含まれていないため、実際にはより多くの医療費がかかっていることも予想されます。また、病院を受診した際に診断されたすべての病や怪我の中で、受診の主な原因となった「主傷病」に絞った調査・分析でもあるため、この平均値はあくまでも「目安」と考えましょう。
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いずれにせよ、がんを発症した場合、助成制度を活用したとしても高額な医療費負担が発生します。2人1人が、がんにかかるといわれるこの時代。万が一のこととは考えず、現在加入している保険の内容を確認したり、どのような助成を受けられるのかなど、事前に調べておくのが良いでしょう。(笹田久美子)
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