食料自給率UPの秘策か?「1/10の面積」で賄える3階建て温室

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2015年03月04日 20:30  FUTURUS

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FUTURUS(フトゥールス)

日本の食料自給率は昭和40年度には70%を記録するも、そこから大きく低下し、近年は40%前後で推移している。

農作物に限って見ても、ただでさえ農地の維持コストがかかる山間部が多く、広大な国土や平野部を有する国に比べて耕地面積が小さい日本。昨今は用途の転用や放棄によって耕作地の減少が進んでいるという。また、食料の輸入依存度の高さは、地球環境や経済・雇用など多くの問題を孕んでおり、効果的な対策が急務となっている。

この点に関し視点をアメリカに移せば、ワイオミング州でプロジェクトが進められている、“従来の10分の1の耕地面積で同じ量の農作物が獲れる”というプロジェクトが非常に示唆に富んでいる。

農業向けとはいえない環境

アメリカ西部の山岳地域にまたがるワイオミング州は、高地・寒冷という農業に適しているとはいえない条件を備えた土地だ。州面積は全米で10本の指に入るものの食料自給率は低く、多くを他州から輸送しているのが現状だ。

そんな同州ジャクソンホールで先日、バイオ系スタートアップ企業のVertical Harvestが、3階建てで約4,100平方メートルの面積を持つ垂直型(Vertical)の温室建設を発表。駐車場の敷地横のわずかなスペースに建設されるこの施設は来年にオープン予定となっており、すでに収穫されると見込まれる内の95%についての売買契約が、地元レストランや食料品店、そしてオンラインを通じて消費者との間で交わされている。

他のコミュニティが手本にできるビジネスモデル

Wyoming 温室 3階建 Vertical Harvestが地元の自治体や企業と協力して進める“9m×45mの小さな水栽培型温室”では、様々なマイクログリーンやトマトといった野菜が育てられ、年間で約5エーカーの耕地と同程度の量が収穫できるといわれている。

各フロアでは、ベルトコンベアー上に設置されたプランターが移動することで、各作物は均等に日光を受けることができる。こうしたシステムは栽培の効率性につながるほか、人工の照明を必要としないため、使用する電力の抑制にもつながるようだ。

この施設では、街全体に供給するほどの量の野菜は収穫できないというが、プロジェクトの目的はむしろ他のコミュニティが手本にできるビジネスモデルの提示だという。設立者のひとりは「持続可能な方法を見つけるための最初のステップ」だと話している。

Wyoming 温室 3階建

豊かな土壌と水を前提とする従来の農業手法と比べると、手法そのものにも議論の余地がありそうだ。

しかし、限られた耕作地という条件の下で安定した食料の自給をめざす日本にとって、参考にすべき点を含む先進的な取り組みだといえるのではないだろうか。

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