iPhoneと連携するフォードの電動アシスト自転車「MoDe:Me」

0

2015年03月08日 20:30  FUTURUS

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

FUTURUS

FUTURUS(フトゥールス)

自動車というのはたいへん便利な乗り物だが、好ましい面ばかりではない。大気汚染や渋滞、交通事故を引き起こし、化石燃料を消費する。自動車メーカーは、サステイナブルな社会を目指す現代においては、いささか居心地の悪さを感じているだろう。

これも、そんな状況のなかでの試みといえるかもしれない。スペイン・バルセロナで開催された『モバイル・ワールド・コングレス』で、フォードが電動アシスト自転車のコンセプトモデルを発表したのだ。

都市部での移動は自転車で

この自転車は自動車や公共交通機関とシームレスに使われることを想定したものだ。自転車を使うことによって都市部での通勤・通学や仕事をよりスムーズかつスピーディにできないだろうか、という試みである。このプロジェクトに際して、フォードは『MoDe:Me』と『MoDe:Pro』というふたつの電動アシスト自転車をデザインした。

いずれも200Wのモーターを持ち、時速25kmまでパワーアシストを行う(日本の規格とほぼ同じだ)。その一方で、フォードが作っただけあって、自動車業界のテクノロジーも採用している。たとえば後部には超音波センサーを搭載して、後ろから追い抜こうとしている自動車の存在を知らせてくれる。

ふたつの自転車の特徴は以下の通りだ。

『MoDe:Me』は、自転車メーカーのDahon社のサポートを受けて製作した自転車で、通勤・通学等を想定し、混雑した道路でも走れるようにと作ったものだ。簡単に折り畳んでクルマに収納でき、郊外にクルマを駐めたら、そこから公共交通機関で運び、都心部で乗れるようにと考えられている。

MWC

『MoDe:Pro』は、フォードによって作られたもので、宅配業者や電気工事業者など都市部の商業利用を想定したものだ。フォードのトランジット・コネクトのような商用車に安全に収納でき、商用車とあわせて使うことでより利便性を高めようという狙いのものだ。

MWC1

iPhoneとも連携

また、この試作車『MoDe:Me』と『MoDe:Pro』は、試作アプリを通じてiPhone 6と連携して使えるように考えられている。たとえばハンドルバーの振動で運転車に道案内をするナビゲーション機能を持ち、自動で方向指示器を出したり、自転車で走りやすい道路を選択したりする。

アシスト率は心拍数と連動して調整され、より楽な移動を可能にする。自転車のバッテリーはクルマに載せている状態で充電できるようにし、フォードの音声コントロールシステムを使ったり、アプリ画面をクルマのディスプレイに表示させたりといった連携ができる。

フォードは、この『モバイル・ワールド・コングレス』を皮切りに、ヨーロッパにおいて都市部での自転車の使われ方のデータを集め、自転車の生態系を理解して、より自転車の安全性を高めようと考えているようだ。

自転車のあり方や都市部の交通環境は国や地域によって違うので一慨にはいえないが、この計画を見るかぎり、“持続可能な社会”を目指す現代においてやや肩身の狭い思いをしつつある自動車メーカーが、ユーザーの自転車へのシフトをなんとか自社の利益に結びつけようと無理矢理こじつけているような印象を受ける。

自動車に収納したり、公共交通機関で運ぼうというのなら自転車は軽いほうがいいはずで、電動アシスト機構など不要ではないだろうか。通勤・通学や宅配業者は知っている道を走るわけだから道案内機能も必要ない。そういう点でこの電動アシスト自転車は、ユーザーからの視点ではなく、自動車メーカーからの視点ばかりで作られている印象で、コンセプトが少々的外れな気がする。

都市部での短距離交通に役立てようと思うなら、シンプルで安価で自由なところに自転車の価値があるのではないだろうか。今後のリサーチで、そういった感覚のズレが修正され、現実的かつ進歩的なものが生み出されることに期待したい。

    ランキングトレンド

    前日のランキングへ

    ニュース設定