次世代エコカー「クリーンディーゼル車」はモータースポーツで通用するのか?

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2015年03月09日 11:30  FUTURUS

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FUTURUS(フトゥールス)

次世代エコカーと言われて真っ先に思いつくものはプラグインハイブリッド車(PHV)か? 電気自動車(EV)か? それとも水素を使った燃料電池自動車(FCV)か?

エコカーの定義をここではっきりとさせておこう。今、国内のエコカーの定義はエコカー減税対象車として認定されているものであるが、次世代エコカーとは減税対象車のなかでも、新車購入時に取得税と重量税が免除されたうえで補助金交付を受けることができる次世代車のことをいう。

つまり、プラグインハイブリッド車(PHV)を除く通常のハイブリッド車とガソリンエンジンのみ車は次世代エコカーには含まれないのである。

クリーンディーゼル車の利点はズバリ燃費

PHVやFCVなどに代表される次世代エコカーのひとつとして今、クリーンディーゼル車にも注目が集まっている。ディーゼルの利点はズバリ燃費だ。同じ排気量のガソリンエンジンに対し2割以上の燃費向上が期待できたのであるが、ネックは排気ガスに含まれる窒素酸化物と粒状性物質、いわゆる黒煙のもととなる物質の排出だった。

石原慎太郎氏が都知事であった時代にディーゼルのアンチキャンペーンが行われた結果、対策を施し難い排気量の小さな乗用車のディーゼルエンジンは21世紀初頭に姿を消した。しかし、尿素を使った排気ガスのクリーン化を発端にディーゼルのクリーン化が積極的に行われ、2010年には日産エクストレイルがクリーンディーゼル車を発表しディーゼル復権の狼煙を挙げ、そこから遅れること2年の2012年11月に、マツダは“スカイアクティブテクノロジー”と称するテクノロジーテーマで開発されたクリーンディーゼルエンジンを搭載した中型車アテンザを発表。

以後、マツダのスポーツカーとミニバンを除く全てのラインナップにクリーンディーゼルを設定し、いまやマツダの全販売数の半数以上がクリーンディーゼルとなっている。

2002

エコロジーとエコノミーの両立

マツダのデミオXDは、昨年10月に発売が開始されたマツダ スカイアクティブディーゼルのボトムラインを担う車種で、世界でも類を見ない1.5リッターという小排気量のディーゼルターボエンジンを搭載する。

このエンジンは電池の力を一切借りることなくJC08という燃費基準で、軽油1リッターあたり30kmも走行できる性能を持つ。35リッターの燃料タンクを持つので、理論値では満タンで1,050kmを走行できるということになる。話半分としても1日15km走ったとして、一度の満タンで充分に1ヶ月間を走りきることができるのだ。

ましてやディーゼルの燃料である軽油はレギュラーガソリンに比べてリッターあたりで概ね20円安い。燃費がいいということはそれだけ排出ガスが少ないということであり、燃料自体も安価であるため、エコロジーもエコノミーも両立できるのである。なお、軽油はディーゼルエンジンの燃料であって、軽自動車の燃料ではない。多くの軽自動車はガソリンが燃料だ。

2007

ターボを搭載するといっても、最高出力は同クラスのガソリン車と同等では非力な部類に入る105馬力だが、トルクはディーゼルの強みで22.5kgmと、2.5リッターのガソリン車並みとなっており、最高トルクが回転数1,500回転と低回転域から発生することで発進加速にも強い。また、街中では非常に運転しやすいエンジンである。

トルクの大きなエンジンはアクセルの踏み込みに対して反応が早い傾向にあるので、運転の楽しみも大きいといえる。このエンジンの性能数値をどう読み取るかといえば、最高速は伸びないがコーナーの立ち上がり加速は速い、ということになる。

2003

クリーンディーゼルエンジン車が既存のガソリン車とレース

クリーンディーゼル市販車としてのデミオXDは非常に評判が高く、自動車メディアはこぞって「運転が楽しい」「人馬一体のスポーツ性を感じる」を連呼するほどであるが、ならばモータースポーツ、特にレースの分野に入ったときにデミオのクリーンディーゼルは、そのスポーツ性を発揮しライバルと戦えるのかという議論があがることは自明の理であった。

2010

その議論を実証しようと立ち上がったのがTeam NOPROだ。マツダのスポーツカーであるロードスターのチューニングスペシャリストとして名を馳せる有限会社ノガミプロジェクトが母体となるレーシングチームで、代表の野上敏彦さんはマツダのルマン24時間レースチャレンジに6年間レースメカニックとして参加し、自身もルマン参戦マシンとほぼ同仕様のレーシングカーで国内のレースに参戦した経歴を持っている。

2012年から先代のデミオでスーパー耐久シリーズに参戦し、2013年にはマツダ史上初のレシプロエンジンによる耐久レースクラス優勝を果たした。昨年度はシリーズランキングST-5クラス3位という好成績をあげている。

スーパー耐久シリーズとは、上は日産GT-RやメルセデスベンツSLS、スバルWRX、トヨタ86、そして下はホンダFITやトヨタ ヴィッツ、デミオなど、基本的に市販車をベースとしたレーシングカーで戦われるレースシリーズで、エンジンには基本的には手を入れることができず、外観も市販のカタチを極力残すようにルールで定められ、排気量などで別けられたクラスで順位を競うものだ。遅いクルマと速いクルマが混走しており、いうなれば、速度無制限の高速道路に様々なクルマが走っている状態をレースにしたようなもの。

このスーパー耐久シリーズでデミオXDは、ST-5クラスという一番排気量の小さいクラスに出場し、ホンダFIT3やトヨタ ヴィッツと戦うことになる。

2005

特にホンダFIT3は137馬力という出力で手ごわい存在だが、5時間や8時間というレース時間が課せられる耐久レースでは、デミオXDが得意の燃費も勝敗に重要な要素として絡んでくる。規定ピット回数が設定されているスーパー耐久だが、そのピット中における給油の回数を減らすことができればピットストップの時間を減らすことができ、一回の給油量を減らせばその分だけ総合的な車体重量は軽くできる。どのような戦略をとるかは今の段階ではわからないが、燃費がいいことによって戦略も大きく変わることが予想できる。

ハイブリッドだけ、電気自動車だけという限定的なエコカーレースは今までもあった。世界を見れば、ルマン24時間レースを含む世界耐久選手権やアメリカのグランダムシリーズなどディーゼルエンジンの純粋なレーシングカーが活躍している場面もあるが、市販車ベースのクリーンディーゼルエンジンのレーシングカーが本格的な耐久レースを走るということは日本初の出来事。

次世代エコカーであるクリーンディーゼルエンジン車が既存のガソリン車とレースで勝負することで、今まで見えなかった問題も可視化できるだろう。また、それを克服することで新たなイノベーションが起きるかもしれない。目標どおり優勝を果たすことができれば、“エコは当たり前”でそれ以上の何かを模索するような、自動車全体のあり方も変わる可能性がある。そういった意味でこのチャレンジの意味はかなり大きなものとなるのだ。

2009

この壮大なチャレンジに向かうドライバーは右から、SUPER GTや海外のレースシーンなどで華々しい実績を持つ谷川達也選手。自動車ジャーナリストでありながらフォーミュラーマシンなどで経験を積んでいる山田弘樹選手、先述の野上代表、そしてご子息でロードスターレースなどで活躍した実績を持つ野上達也選手。そしてレースクイーンの汐美茉琴ちゃん。このメンバーに優秀なメカニックやサポートメンバーを含めたTeam NOPROがこのチャレンジを動かす。

スーパー耐久シリーズ開幕戦は、3月28〜29日に栃木県のツインリンクもてぎで開催される。また、レース終了後にはダイジェスト放送をTOKYO MXなどでテレビ放映される。ぜひともこのチャレンジを注目してみてほしい。

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  • ずいぶん昔にTopGearでやってたよ、その検証ネタ。
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