「地域包括ケアシステム」って何?在宅医療専門の先生が語るその姿とは

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2015年03月12日 12:40  QLife(キューライフ)

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QLife(キューライフ)

病院や介護施設に行くだけではない多様な過ごし方を可能に

(神戸医療イノベーションフォーラムにて撮影)

 最近、ニュースでもよく耳にする「地域包括ケアシステム」。いよいよ差し迫る高齢化社会の進展に対応するために、国をあげて整えようとしている地域医療・介護の未来のかたちのことです。実は数年前から、このシステムを現実にするためにさまざまな制度改正が進められてきています。

これまで、
 「病気になったら病院へ行き治療してもらい、治ったら家に帰る」
 「年をとり介護が必要になったら施設に行き、介護士などに適切なケアをしてもらう」

 以外のかたちは考えられませんでしたが、これからは多様な「治し方」「過ごし方」が選べる時代へと変わっていきます。例えば病気や身体の状態によっては、自宅で医療や介護サービスを受けることで、家族とともに、若くて健康な頃と同じような生活スタイルを選べるようにもなります。医療や介護の姿が変わったときに、そのサービスを受ける私たち、とりわけ家族はどのようにこの変化を捉えたらいいのでしょうか?

「治療して終わり」ではなく「生活の質をいっしょに守る」社会へ

 在宅医療を専門にしている桜新町アーバンクリニック院長の遠矢純一郎先生が、この地域包括ケアシステムについて、2月に開催された「神戸医療イノベーションフォーラム2015」で講演しました。遠矢先生は、入院や通院などの病院医療は、高齢者にとっては大きな負担になっているといいます。例えば肺炎で入院しても、わずかな期間ベッドに横になっていることがきっかけで、寝たきりになってしまうケースもあるというのです。「肺炎を治す」ために必要な措置や治療が施されたとしても、退院して自宅へ戻る時に寝たきりになってしまっては、患者本人はもちろん家族の生活にも大きな支障をきたしてしまいます。また、がんなどの重い病気であれば、慣れない入院生活を送るうちに食欲が衰え、体力が低下し、治療の妨げにもなることも考えられます。

 遠矢先生はこれらの例をもとに、医療関係者はこれからは「病気を治す」ことだけをゴールにせず、むしろそれがスタートとなるような医療へとシフトチェンジすることが必要だといいます。そして私たち生活者にも、治療や介護が必要な人たちを、できる範囲でみんなが見守る意識が大事だとも。そして、その意識が求められる象徴が、認知症の方々への見守りだと語ります。なぜなら、日本はすでに65歳以上の4人に1人が認知症と推計される※社会に突入しているからです。(※厚労省の2013年の試算による数値)

認知症サポーター制度が示す、「これからの地域での暮らし方」

 遠矢先生が取り組んでいる制度に「認知症サポーター」制度(http://www.caravanmate.com)があります。これは一般の人が認知症に関する講義を受け、オレンジリングをもらってサポーターになれるという仕組みで、すでに2014年末で580万人がサポーターになっているそうです。地域で、家族や近隣の人が必要な知識を持って、少しずつ助け合うようにする。それだけで、医療関係者も家族も、そして本人も、これまで強いられてきた負担を減らせるというわけです。

 この認知症に対する取り組みをきっかけに、さまざまな病気に対する「ケア」を地域全体で行なうようになることが、地域包括ケアシステムのイメージ。こうして日常生活のもっと様々な場面で、地域のみんながケアし合う社会になれば、普通の人々にとっても優しい社会になるはずだ、と先生は言います。(佐藤裕子)

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このニュースに関するつぶやき

  • 国は在宅介護・医療へと政策を切り替えているがそれを担う家族がいない。「女性の輝く国」とやら女性を労働力として社会へ。一人暮らしは全体の三分の一以上。孤独死覚悟せな。
    • イイネ!10
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