モデル活動で「自主退学」を迫られた「女子高生」 学校の通告を拒否できるか?

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2015年03月14日 13:31  弁護士ドットコム

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私立高校の女子生徒がモデルの仕事をしたら、学校から「自主退学」を勧告された。どう対応すればいいか。こんな相談が、女子高生の知人という人物から、弁護士ドットコムの法律相談コーナーに寄せられた。


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彼女は高校1年生のとき、10〜20代向けのファッション雑貨ブランドのモデルとして、学校の制服を着て撮影をおこなった。ブランドのオフィシャルサイトには、いまもその写真が掲載されているという。それまで学校から注意はなかったが、卒業が間近に迫ったある日、「学校のイメージを損ねた」という理由で、自主退学するよう通告されたというのだ。



相談者によると、ブランドのサイトに掲載された写真はいかがわしいものではない。また、校則でアルバイトは禁止されていない。それなのに、事前に弁明する機会もないまま、いきなり「自主退学」を迫られたのだという。



このように学校が生徒に対して、ある日突然、自主退学を求めることは許されるのか。また、女子生徒はこの勧告を拒否できるのか。子どもや学校の問題にくわしい野澤哲也弁護士に聞いた。



●「自主退学勧告」は退学処分に近い重さがある


「『自主退学勧告』というと、退学を『求める』だけのように受け取られがちです。しかし、実態は違います。自主退学に応じなければ、その後に学校側から退学処分を受けるケースが多いため、実質的には『退学処分』と同等に考えられる重い勧告と考えてください」



野澤弁護士はこのように、学校側の勧告の意味を説明する。



「ただ、学校には生徒を退学処分にする権限があるとはいえ、『自主退学勧告』を出す以上、それなりの根拠を示す必要があります」



今回のケースでは、「学校のイメージを損ねた」ということを自主退学の理由にあげているが、それだけで退学すべき根拠といえるのだろうか。



「学校のイメージとは、校風を指しているのだろうと思います。特に私立学校には、それぞれ独自の校風があり、それを損なうことが処分の根拠となることがあります。



その場合、学校が、受験生や在学生、その保護者にしっかりと校風(や校則)を伝え、積極的に周知していることが条件となります。また、自主退学の勧告にあたっては、モデル活動によってどのように校風が損なわれたのか、詳細な説明が必要です」



●勧告に至る「手続き」にも問題がある


モデル活動は「校風を損ねる」ので認めない。そんな学校の方針が事前に伝えられていたら、女子生徒はその学校に入学しなかったかもしれない。逆にいえば、そういう方針がきちんと伝えられていないのに、いきなり退学を迫るのは酷だろう。



「今回のケースでは、学校側の手続きにも問題があるといえます。自主退学の勧告前に、女子生徒から事情を聞いたり指導もせず、卒業間近に突然、自主退学を通告した点は、大きな問題です。



『校風』が退学勧告の段になってはじめて出てきたこと、また、手続き上も問題があること、この2点から今回の自主退学勧告は許されず、女子生徒は通告を拒否できると考えます。



ただ、学校が一度退学処分をしてしまえば、後から争うのは時間がかかります。自主退学の勧告が出た時点で専門家に相談し、早期に学校と協議をして、問題を解決するべきです」


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
野澤 哲也(のざわ・てつや)弁護士
横浜弁護士会所属。退学問題以外にも、学校や幼稚園における施設事故など子供や学校の問題を広く取り扱うほか、労働事件、離婚・相続事件、交通事故、債務整理、不動産事件、中小企業のトラブルなどに対応している。
事務所名:市民総合法律事務所
事務所URL:http://www.shiminsogo-lo.gr.jp/



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