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熱したフライパンの上に水を落とすと、水滴が激しく跳ねまわるということは、よっぽど料理をしないひとでないかぎりご存知だろう。だが、その現象に『ライデンフロスト効果』という名前がついていることは、知らないひとが大半ではないだろうか。そしてこの現象が、将来の火星における活動のエネルギー源として活用できる可能性があるという。いったいどういうことなのか?
これはスコットランドのノーサンブリア大学とエジンバラ大学の研究チームによるもので、科学誌『ネイチャー・コミュニケーションズ』で発表されたと、ノーサンブリア大学のウェブサイトにおいて紹介されている。
ドライアイスの蒸気を動力源に
この研究チームが火星上で活用しようとしているのは、ライデンフロスト効果を使ったエンジンだ。このライデンフロスト効果というのは、液体がその沸点よりもずっと高い温度の物質表面に近接したときに起こる現象で、冒頭に書いたように、熱したフライパンの上に少量の水を落とすと起こるのもこれだ。
![ライデンフロスト](http://nge.jp/wp-content/uploads/2015/03/b2dd206172be216bfeebeb10c5e0ea30-690x409.png)
そして、同じことが固体の二酸化炭素、つまりドライアイスにおいても起こるという。熱した表面の上に置かれたドライアイスは、蒸発したガスの上に乗っかる形で、空中に浮くのだ。そこでノーサンブリア大学の研究では、そのドライアイスの蒸気をエンジンのエネルギー源にすることを考えた。ライデンフロスト効果をエネルギー源にしようという試みはこれが初めてだという。
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特に地球を離れた宇宙での長期にわたる滞在や居住の際に大きなメリットがあると期待される。自然に生成した二酸化炭素の氷を、廃棄物ではなく資源として使うことができるようになるからだ。そしてこれは火星へのミッションが“片道切符”ではなくなる可能性を高めてくれる。
ドライアイスは火星上に豊富にある
というのは、ドライアイスは地球上にはそれほど多くある物質ではないが、火星においては季節によって小峡谷などに自然に生成されるものであるらしいことが、NASAの調査でわかってきている。ライデンフロスト・エンジンを活用すれば、そのドライアイスから発電所を作ることも可能だというのだ。
火星における二酸化炭素は、地球上における水のような役割を果たしています。火星では、二酸化炭素は幅広く活用できる資源で、気温の変化のなかで循環的に状態を変えていくものなのです。
と、ノーサンブリア大学の研究者のひとり、ロドリゴ博士はいう。そしてこのライデンフロスト・エンジンの特徴を、同研究チームのウェルズ博士はこう説明する。
ライデンフロスト・エンジンの作動原理は、蒸気機関とはかなり異なるものです。高圧の蒸気の層は、ローターを宙に浮かせてベアリングなしに回転させ、エネルギー源を動力に変えることができます。つまり、非常に摩擦抵抗が少ないという特徴を持っています。
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![dryice](http://nge.jp/wp-content/uploads/2015/03/dryice-690x400.png)
この研究チームは、人類の今世紀における大きな挑戦のひとつは、特に極端な環境下において新しいエネルギー源を見つけ出すことだと考えているという。それが今回のライデンフロスト・エンジン開発の原動力になっているのだ。
将来、人類が別の天体に長期間滞在するようになったとき、現在のわれわれには想像もつかない方法でエネルギーを獲得して生活していくことになるのかもしれない。直接われわれの生活に影響はなさそうだが、興味深い研究だ。