![](https://news-image.mixi.net/article/218/218_20150318_99009_003.jpg)
『Apple Watch』が発表され数日が経った。発売予定日の4月24日に向けて情報収集されている方も多いかと思う。技術やユーザー体験の詳細は他媒体に任せるとして、今回は時計販売に関する資格である“ウォッチコーディネーター”でもある筆者が、デザインや今後の進化について解説したい。
デザインにはマーク・ニューソンの影
まずは外装のデザインを見てみよう。ここには先日Appleに入社したと思われるプロダクト・デザイナーであるマーク・ニューソン氏の影が濃く見受けられる。
![Applewatch02](http://nge.jp/wp-content/uploads/2015/03/Applewatch02-690x345.jpg)
たとえば、丸みを帯びた角形のケース。これはマーク・ニューソン氏が過去立ち上げた時計ブランド『IKEPOD』の影響を強く感じる。上記画像はIKEPOD社の『マナティー』(2001年発売)というモデル。角形でありながら優しい印象を持つ丸みのあるケースである。
![Applewatch03](http://nge.jp/wp-content/uploads/2015/03/Applewatch03-690x620.jpg)
最も印象的だったのはベルトである。ベルトと留め具が一体化している『Apple Watch』は、『IKEPOD』のデザインを強く想起させる。
![Applewatch04](http://nge.jp/wp-content/uploads/2015/03/Applewatch041-690x410.jpg)
ベルトの一端に切れ目を入れ、もういっぽうの端を留め具にとめ、余ったベルト部分を内側に入れることでパーツが外に出ないような工夫は、『IKEPOD』と同じといえよう。
|
|
316Lとは何か
『Apple Watch』のレギュラーモデルに採用される鍛造された316Lステンレススチール。
![Applewatch05](http://nge.jp/wp-content/uploads/2015/03/Applewatch05.jpg)
そもそも、ステンレススチールとは“Stain(キズやヨゴレ)”が“less(より少ない)”、転じて“錆びにくく汚れにくい”金属のことである。腕時計は常に装着することが予想されるので、汗や皮脂汚れに強くなくてはならなく、このステンレススチールは有効だと考えられる。
同じステンレススチールのなかでも、炭素やケイ素、マンガンなど含有量が違うものが存在するが、『Apple Watch』に採用される316Lとは、そのなかで最も汗や体液に強いとされている。炭素量が少ないため溶接時に腐食が少なく、加工用としても優れている。
また、316Lはニッケルやコバルト、錫などの含有量が少なく、金属アレルギーを引き起こしにくい。チタンなども同じように金属アレルギーを引き起こしにくいが、加工しにくいため316Lが採用されたように思われる。こういった特色を持つ316LステンレススチールをAppleは“鍛造”で仕上げているようだ。
金属を圧縮し、プレス機で型抜きする鍛造は、金属の密度が高まりキズに強い。また、仮にキズがついたとしても研磨をすることで元の輝きが復元できる。ブライトリングやロレックスといった高級腕時計ブランドも、316Lでの鍛造を採用している。つまり、腕時計としての定石を『Apple Watch』は踏んでいるように思われる。“EDITION”モデルには18金イエローゴールドやピンクゴールドを利用しているのも、時計製造のルールに踏まえたものといえよう。
|
|
リキッドメタル搭載にも期待
Appleは近年、リキッドメタルに関して特許を取得している。リキッドメタルとはその名の通り、高温では液体のように流動性のある合金のことである。高温では流動性を持ち、冷やされるとステンレスの3倍の硬度をもつという特性がある。
元々腕時計メーカーのオメガが開発し、ダイバーズウォッチのセラミック製のベゼル部分の文字に流し込まれるようにして使われていた。継ぎ目がないような見た目の仕上がりは美しいため、『Apple Watch』だけでなく他のApple製品にも使われることであろう。
以上の点を踏まえると、現段階の『Apple Watch』はまだ進化の途上にあるプロダクトのように思われる。思えば『iPhone 3G』が発売された際も、どう扱えばよいかわからないという困惑の声もあった。
しかし、そこから数年経った今を見ればどうだろう、街中で『iPhone』を見ない日はなくなったといえよう。今回発表されたモデルを軸に、さらなる変化を期待するのは自分だけではないだろう。