便の時間を教えてくれるだけじゃない!尊厳も守るデバイス「D Free」

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2015年03月19日 20:30  FUTURUS

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FUTURUS(フトゥールス)

Apple Watchの発売日が決まり、ウェアラブルデバイス界隈は話題に事欠かないが、最近ではメディカル・ヘルスケア領域においてQOL(クオリティ・オブ・ライフ)の向上を支えるデバイスが注目を浴びている。

お腹に貼るだけで排泄を予知するデバイスと謳われた『D Free(ディーフリー)』は記憶に新しい。

超音波センサーで排泄の釣行を検知

『D Free』は、トリプル・ダブリュー・ジャパン社が医師や識者の協力を得て開発中で、その仕組みは超音波センサーで膀胱や前立腺、直腸をモニタリングし、膨らみや振る舞いをもとに排泄の兆候を検知するというもの。

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スマートフォンと連動する専用アプリ経由で「10分後に出ます」と通知してくれるため、トイレまで辿り着けずに焦り苦しむといった窮地を未然に防ぐことができる。誰もが突然の便意に悩まされた経験を持つだけに、ネット上でもその利便性に期待する声は大きい。また、排泄介助が必要な高齢者に対する活用など、具体的な利用シーンを想定しやすいことも特徴的だ。

気になる価格は、199ドルとのことだが、これは5月からクラウドファンディングサイトの『Indiegogo』および『Makuake』で予約を開始する際のもので、米国と日本で先行販売され出荷予定は12月といわれている。一般向け発売の有無、商品バリエーションなど、今後の展開に関する詳細は不明だが、開発者は介護領域での利用促進を期待しているとのことだ。


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介護だけでなく、患者の補助ツールとして

ヘルスケアという観点でいえば、先日『ためしてガッテン』でも取り上げられ話題となった病気“便失禁”の患者、特に便意を感じず知らないうちに漏れてしまう“漏出性便失禁”の症状を持つ方にとっても、画期的な補助ツールとなり得る。

「気がついたら下着が汚れていた」、「便意を感じたもののトイレまで間に合わなかった」といった経験をし、ショックを受けた……

便が漏れるというと赤ちゃんか高齢者の話と思われがちだが、国際失禁学会では“自らの意思に反して、社会的、衛生的に問題となる状況で、便が漏れる症状”と定義づけており、実のところ便失禁の患者は、20〜65歳で310万人以上、65歳以上で135万人以上ともいわれている。加齢による括約筋機能の低下、痔ろうなどの肛門疾患以外にも、出産後や大腸がんや直腸がんの術後などにもなりやすい。つまり、誰もがなり得る病気なのである。

それだけの患者を抱える病気であるから、排便障害の患者を専門的に診療する専門医や、便失禁治療専用植込み型デバイス(心臓ペースメーカーと同様の形状をした仙骨神経刺激システム)を開発する医療機器メーカーは、治療の選択肢を広げるべく尽力している。

便失禁は、検査を通して原因や症状を明確にし、適切な治療法(薬や医療機器)や、食事、生活習慣の指導により改善を図ることが主流だが、『D Free』によって患者の日々の生活における不安が解消されるのだとしたら、このプロジェクトの価値は計り知れないものがあるといえるだろう。

“尊厳を守ること”こそがケアすべきポイント

筆者がここまで『D Free』に期待する理由は、便失禁ならではの難点にある。それは、“恥”が邪魔をするということだ。一般に排便をコントロールできないのは、2〜3歳の幼児までで、それ以降漏れてしまうというのは“恥ずかしいこと”、“失態”とされる。

便失禁治療デバイスを手がける医療機器メーカーのマーケティング担当の方にお話を聞いたところ、異変を感じても恥ずかしいからという理由で周囲に相談しなかったり、病院行くことなく一人で悩んでしまったりするケースが多く、病院で受診した場合でも、専門医の治療を受けている患者はほんのわずかだという。

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まずは、便失禁という病気の啓発を目指し、その上で「恥かしいいことではありません」、「一人で悩まないでくださいね」と安心させ、診察を受けることに前向きになってもらう必要があるのだ。

もちろん、症状には個人差があり、適切な診断と治療を受けたとしても、すぐに良くなるとは限らない。だからこそ、本質的な解決とは別の観点で『D Free』のようなツールが活きる。ポイントは、便失禁の患者や介護が必要な高齢者にとっての“尊厳を守る”ことである。

漏れてしまうのは致し方ないことで、恥じる気持ちまでも飲み込む必要はない。体をコントロールできなくても、心をケアすることはできるのだ。

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