変形性関節症の病態制御メカニズムを解明

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2015年03月23日 12:10  QLife(キューライフ)

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QLife(キューライフ)

根本的な治療法が開発されていない変形性関節症

 加齢などによって骨の関節面の軟骨がすり減って変形し、痛みや腫れを引き起こす変形性関節症。なかでも代表的なのは、膝関節を傷める変形性膝関節症で、国内に2530万人もの患者がいると言われています。立ち上がった時などに膝が痛い、階段の上がり下りや歩行がつらい、という症状が現れます。

 変形性関節症は、高齢者の運動機能を脅かす疾患と言われていますが、いまだに根本的な治療法が開発されていません。そこで注目を集めているのが、東京大学大学院医学部付属病院の齋藤琢特任准教授らが発表した研究成果。齋藤教授ら研究チームは、変形性関節症を制御するメカニズムについて解明したのです。

「Hes1」を抑制すると変形性関節症の進行が抑えられる

 関節面にある軟骨は、タンパク質からできており、これらを分解する「MMP-13」などの酵素が変形性関節症を発症・進行させます。これまでは、このMMP-13を誘導する「Notchシグナル」という分子を阻害する研究が行われていましたが、Notchシグナルが伝達していく詳しい分子機構は解明されていませんでした。

 そこで、研究チームは、Notchシグナルが伝達していく際、豊富に発現する「Hes1タンパク質」という転写因子に注目。Hes1を抑制することで、変形性関節症の進行を抑えられることを、マウスを用いた研究で明らかにしたのです。また、このHes1の発現には、「カルモジュリンキナーゼ」という酵素が影響していることも判明。Hes1とカルモジュリンキナーゼの関係性について生体レベルで証明したのは、世界初とのことです。

 今後は、Notchシグナルとカルモジュリンキナーゼを、変形性関節症治療のターゲットとし、マウスやラットを用いた検証実験を重ねるほか、大型動物での検証実験も計画されています。ヒトへの臨床試験にはまだ時間がかかるでしょうが、変形性関節症治療の根本治療が可能になる日が待ち望まれます。(笹田久美子)

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