真っ赤な液体から「モノが生まれる」超高速3Dプリンターがキモすごい

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2015年03月23日 21:20  FUTURUS

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FUTURUS(フトゥールス)

“3Dプリンターの普及は、モノづくりに大きな変革をもたらした”などとありがたがっていた私たちは、まったく甘かったようだ。ある観点からすれば、3Dプリンターなんてまったく物足りないものだった。

どういう観点か? それは生産スピードだ。そしてその問題をいきなり打ち破る3Dプリンターが発表された。

造形物がみるみる現れる

まずは下の動画を見てほしい。従来の3Dプリンターの工程を知っているひとからすれば衝撃的なはずだ。成形した物体が、液体レジンのなかからニュルニュルと出てくるのだ。


動画を別画面で再生する

左下に「7× SPEED」と書いてあることからもわかるとおり、7倍のスピードに圧縮されてはいるけれど、それでも従来の3Dプリンターと比べて25から100倍のスピードで造形することができるという。

従来の3Dプリンターは、3Dプリンターとはいっても、じつは2Dでプリントしたレイヤー(層)を重ねていくという方式をとっていた。そのために造形に時間がかかり、しかもできあがった完成品はレイヤーの向きによる弱さがあった。しかし、この3Dプリンターは違う。連続的にプリントしていくのだ。そのため時間を短縮でき、レイヤー構造による弱さもない。

Carbon3D_CLIP_03

紫外線と酸素を活用する

シリコンバレーのCarbon3Dという企業が発表したこの3Dプリンターの技術は、“Continuous Liquid Interface Production”の頭文字をとって『CLIP』と名づけられている。この『CLIP』の特徴は、紫外線と酸素をうまく組み合わせて使っていることだ。

材料として使用するのは紫外線硬化樹脂の液体(レジン)だ。そのレジンのプールの下側は、紫外線を通すとともに、酸素も透過させる(コンタクトレンズをイメージすればいい)“窓”になっている。酸素は樹脂の硬化を妨げる働きをする。そこで、窓から取り込まれた酸素が、窓とレジンとのあいだに、硬化が起こらない薄い層“デッドゾーン”を形成する。

CLIP

その状態で、下から窓に紫外線の映像を当ててやると、紫外線が当たったデッドゾーンのすぐ上のレジンが硬化する。そこでレジンプールの上に設置した“成形プラットフォーム”でゆっくり対象物を引き上げつつ、映写する紫外線の像を変化させてやれば、連続的な造形が可能になるというわけだ。

Carbon3D_CLIP_02

『CLIP』技術による大幅なスピードアップ

瞬間的に見ればこの3Dプリンターも2Dの積み重ねではあるが、時間の経過とともに見れば対象物は連続的に成形される。“窓”に映写する紫外線の映像は映画のように変化するものでよい。この方式によって、『CLIP』は従来の3Dプリンターよりも圧倒的に速い造形スピードと、安定した品質を実現するという。また、できあがった造形物の表面はなめらかであり、使えるポリマー材料の幅も広いという。

これまでの3Dプリンターは、造形に時間がかかっていた。加えて、前述したレイヤー構造による特有の弱さのため、3Dプリンターが活用されるのは試作どまりというケースが多く、大量生産にはあまり向いていなかった。

しかしこの『CLIP』は、これまでの3Dプリンターの欠点を一気に解決した。これによって産業界における3Dプリンターの活躍の場はさらに広がっていくのかもしれない。

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