コンビニでアルバイトをした経験がある人の中には、売れ残って捨てられた弁当やパンを、持ち帰ったことがある人もいるかもしれない。しかし、軽い気持ちで持ち帰ると、思わぬトラブルに発展する可能性がある。弁護士ドットコムの法律相談コーナーに「廃棄物を持ち帰ったら、横領だと言われた」という相談が寄せられたのだ。
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相談者がアルバイトをしているコンビニでは、深夜、ビニール袋の中に入れられた廃棄物が事務所内に置きっぱなしになっていた。その廃棄物を何度か無断で持ち帰ったのだという。しかし、あるとき、店長に見つかってしまったそうだ。
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店長からは「廃棄物は会社の所有物であり横領罪にあたる」として、持ち帰った廃棄物のおおよその金額の支払いを求められたという。しかしその支払いには明細等もなく、根拠もあいまいだった。相談者は「窃盗と言われても仕方ないとは思うが、横領扱いされ、横領した相当の金額を支払うというのは、行き過ぎではないか」と納得がいかない様子だ。
一般的にコンビニの廃棄物というと、弁当などの食品廃棄物が考えられる。もし、ゴミの回収に出すために店内の事務所などに置かれていた「期限切れの弁当」を持ち帰った場合、横領にあたるのだろうか。また、持ち帰った分の金額を支払わなければならないのだろうか。足立敬太弁護士に聞いた。
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「このケースは、私の見解では、横領というよりも窃盗にあたると考えられるのですが、いずれにしろ犯罪が成立する可能性は高いといえます」
足立弁護士はこのように切り出した。捨てられたものを持ち帰って、なぜ犯罪になるのか?
「賞味期限切れの弁当など、廃棄処理した物であっても、所有権は依然として店にあります。また『占有』、つまり物に対する事実上の支配は、コンビニの店長にあると考えられます。したがって、店長に黙って廃棄物を持ち出せば、店長の占有を侵害したとして窃盗罪が成立すると考えられます」
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廃棄物の経済的価値はほとんど0円に近いだろう。それでも、窃盗罪が成立するのか?
「価値が低いからといって、窃盗罪の成立を否定する理由にはなりません。ただ、被害額が小さければ、ただちに警察の捜査対象にはならない場合もあると思います。
しかし、たとえば勤務ごとに毎回持ち出しを繰り返したり、大量に持ち出したり、勤務日でないのに、わざわざ店に来て廃棄物を持ち出すなどの常習性や手口の悪質さが考慮されれば、刑事事件として立件される可能性も否定できません」
相談者は、持ち帰った廃棄物の代金を支払えと言われているようだが、その必要はあるのか?
「被害弁償は、実害ベースが原則です。売れる商品であれば、売値での弁償が必要でしょうが、廃棄処理した廃棄物の弁償となれば、仕入原価を割っていると考えられます。ですから、店への弁償額については争う余地があるでしょう」
足立弁護士はこのように述べていた。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
足立 敬太(あだち・けいた)弁護士
北海道・富良野在住。投資被害・消費者事件や農家・農作物関係の事件を中心に刑事弁護分野も取り扱う。分かりやすく丁寧な説明だと高評価多数。
事務所名:富良野・凛と法律事務所
事務所URL:http://www.furano-rinto.com/
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