「夫と不倫した女を辞めさせろ」会社に妻が現れた! こんな抗議は法的に問題ないか?

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2015年04月14日 15:52  弁護士ドットコム

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既婚者の不倫なんて珍しくないとはいえ、配偶者にバレてしまったら・・・。東京都内の金融関係の会社で働くS子さん(30代)は最近、同僚の女性の修羅場を目撃したという。「40代くらいの地味な女性が、会社に押しかけてきて『そちらの社員のK子さんを辞めさせてください!』と、受付で騒ぎ立てていたんです」


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この女性が攻撃していたK子さんは、営業先の会社で女性の夫と知り合って不倫関係になったようだ。女性がK子さんの勤務先にまで押しかけてきたことで、K子さんは不倫の事実を会社中に知られてしまった。その後、別部署に異動させられたが、誰もが「左遷だ」と思ったという。



「この女性は、K子さんの会社に押しかけただけでなく、メールや電話で執拗な抗議を繰り返していたそうです。不倫は良くないけど、さすがに奥様のやり方もなあ・・・と思いました」。騒動を間近で見たS子さんは複雑な思いを語る。



道ならぬ恋に走ってしまった報いとも言えるのかもしれないが、行き過ぎた嫌がらせは、法的に問題ないのだろうか。また「会社を辞めろ」などと言われた場合、従う必要はあるのか。澤藤亮介弁護士に聞いた。



●行き過ぎた嫌がらせは「犯罪」なのか


「本件のような不倫事案の場合、不倫された妻は、夫の不倫相手『個人』に対し、夫との不貞行為を原因とする慰謝料請求を行い、妻として被った精神的損害を慰謝料という『金銭』で償うよう求めることが、法律上の本来あるべき形です」



そのような観点からみて、今回のケースはどう考えたらいいだろう。



「不倫相手やその勤務先に対する妻の行き過ぎた『嫌がらせ』は、その方法や回数などによっては、民事上の不法行為(民法709条)にあたります。その結果、不倫相手や勤務先から損害賠償を求められ、最終的に、本来もらえるべき不倫慰謝料が減額されてしまう可能性もあるのです」



また、嫌がらせは刑法上の「犯罪」にあたる可能性もあるという。



「嫌がらせの程度が、不倫相手個人や勤務先の業務を妨害するほどであれば、業務妨害罪(刑法233条、234条)にあたる可能性があります。



また、勤務先に対する害悪を告知するなどして、交際相手本人やその上司に、むりやり面会や謝罪をさせれば、強要罪(刑法223条)などに問われる場合もあります。このように、刑事上の処罰まで受ける可能性が出てきますので、注意が必要です」



●妻との裁判で敗訴しても「会社は辞めなくて良い」


では、妻から「会社を辞めろ」などと言われた場合に、従う必要はあるのか。



「不倫交際の事実を知った勤務先が、懲戒処分として解雇することが認められるかどうかについては、判例は基本的に慎重な立場です。不倫はあくまで『私生活上の問題』であって、原則として懲戒の対象とはならないとの判断が多く見られます」



勤務先が解雇処分を行わなかった場合、辞める必要はないということだろうか。



「さきほど述べたとおり、法律上は、不倫された妻との『慰謝料』の問題に尽きます。たとえ妻との慰謝料をめぐる裁判で敗訴したとしても、裁判所から不倫相手に対し『会社を辞めろ』との判決が出ることはありません。



したがって、不倫相手の女性は、妻からの要求に従って勤務先を辞める必要はありません」


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
澤藤 亮介(さわふじ・りょうすけ)弁護士
東京弁護士会所属。離婚、不倫問題、労働問題などを中心に取り扱う。iPad、iPhoneなどのデバイス好きが高じ、事務所内の事件資料や書籍の全面データ化等、ITをフル活用して業務の効率化を図っている。日経BP社『iPadで行こう!』などにも寄稿。
事務所名:新宿キーウェスト法律事務所
事務所URL:http://www.keywest-law.com



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