飲酒で増えるアセトアルデヒドと胃がんのリスク
画像はプレスリリースより春はお花見や歓送迎会で、お酒を飲む機会が多い季節。お酒に弱い人にとっては、少しの飲酒でも顔が赤くなったり、頭痛がしたりと悩ましいところ。でもそれだけではありません。お酒に弱い人が飲酒をすると、胃がんのリスクが高まることをご存じでしたか。
がんによる死亡のうち、胃がんは男女ともに全世界で3番目に多い原因であり、東アジアにおいては最も高い死亡率を占めています。胃がんの原因としては、喫煙や食生活、ヘリコバクターピロリの感染などがありますが、飲酒もそのひとつです。
アルコールは体内に吸収されると、まずアセトアルデヒドに、次に酢酸へと代謝されていきます。このとき活躍するのがALDH2という酵素。これには、活性型と不活性型があり、アセトアルデヒドが酢酸に代謝される速度に個人差がでてきます。
お酒に弱い人は、ALDH2が不活性型であることが多く、アセトアルデヒドがなかなか酢酸に代謝されずに蓄積されます。アセトアルデヒドは、WHO勧告でも「発がん物質」に分類されているもの。体内のアセトアルデヒド濃度が高まると、胃がんリスクも高まると考えられています。
非必須アミノ酸「L-システイン」が胃がんのリスクを下げる?
ところが、東北大学の飯島克則講師、前嶋隆平医師、下瀬川徹教授らの研究グループが、あるアミノ酸を投与すれば、飲酒後の胃液中のアセトアルデヒドの増加を抑制できることを明らかにしました。それは非必須アミノ酸「L-システイン」です。
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L-システインを服用すると、ALDH2活性型で67%、ALDH2不活性型で60%も、胃内のアセトアルデヒドの低下が観察され、その効果が2時間持続しました。また、この研究では、胃内へのアルコール投与後のアセトアルデヒド濃度を、ALDH2不活性型と活性型とで比較しています。その結果、不活性型では活性型よりもアセトアルデヒド濃度が5.6倍増加していたことが、初めて明らかになりました。
さて、アセトアルデヒドの増加を抑制するL-システインは、ヨーロッパの多くの国では健康食品にも使用されています。その徐放性カプセルを服用すると、胃内でL-システインが徐々に放出され、アセトアルデヒドと反応し、その毒性を中和するのです。
今回の研究では、ALDH2活性型、不活性型両方の人でL-システインによるアセトアルデヒドの低下が観察されたことから、「お酒に強い人」も「お酒に弱い人」のどちらにとっても、胃がん予防に効果があると期待されます。(下玉利 尚明)
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