コンビニ加盟店のオーナーは「労働者」――なぜ東京都労働委員会はそう判断したのか?

0

2015年04月17日 16:31  弁護士ドットコム

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

弁護士ドットコム

記事画像

大手コンビニ「ファミリーマート」とフランチャイズ契約を結んだ加盟店のオーナーを「労働組合法上の労働者」として認める――。東京都労働委員会(都労委)は4月16日、そんな判断を下し、オーナーたちが作った労働組合との団体交渉に応じるよう、ファミリーマートに命じた。同様の判断は、昨年3月の岡山県労働委員会に続き、2例目という。


【関連記事:18歳男子と16歳女子 「高校生カップル」の性交渉は「条例違反」になる?】



オーナーたちは、2012年8月に労働組合「ファミリーマート加盟店ユニオン」を結成し、ファミリーマートに「団体交渉」を申し入れたが、応じてもらえなかったとして、東京都労働委員会に救済を申し立てていた。



一方、ファミリーマート広報室は弁護士ドットコムの取材に対し、「加盟店主はあくまで独立した経営者です。この度の労働者性を認める命令は、適切でないと考えています。中央労働委員会への再審査の申し立てなどを検討します」とコメントした。



今回なぜ、都労委はオーナーを「労働者」と認めたのだろうか。コンビニ加盟店オーナーたちでつくる「コンビニ加盟店ユニオン」の顧問を務める中野和子弁護士に聞いた。



●組合として「団体交渉」ができる


そもそも、労働組合法上の労働者として認められたということには、どんな意味があるのか?



「労働組合法上の労働者として認められれば、労働組合としての権利を主張できます。



労働組合にはさまざまなメリットがありますが、最大のポイントは『会社が団体交渉に応じる義務がある』という点でしょう。



労働組合が団体交渉を申し入れたら、会社は法的な義務として、それに応じなければなりません。このことの意味は、個別バラバラに管理されていた労働者(加盟者)にとって、非常に大きいです」



今回、都労委は、コンビニのオーナーが労働力として組み込まれていることや、契約内容が一方的・定型的だったことなどを理由に、オーナーを「労働組合法上の労働者だ」と認めた。コンビニ加盟店オーナーの働き方とは、どんなものなのだろうか?



「オーナー・店長といっても、仕事のほとんどの時間は、アルバイトと同じような業務を自ら行っています。



ファミリーマートが以前、あるオーナーに示した経営資料では、加盟店のオーナーと家族で毎週7日、1日18時間の店舗労働を担うことが前提とされていました」



アルバイトを雇って働かせるわけにはいかないのだろうか?



「コンビニの1日あたりの売上(日販)は、ファミリーマートだと1店舗平均で約52万円となっています。



ところが、さきほどの資料で示されていたビジネスモデルに基づいて、私たちが試算したところ、オーナーが店舗労働を全くしないと、日販が60万円でも収支ゼロ、初期投資等を考慮すればマイナスになるような計算です。



なかにはオーナーが店舗労働をしなくても済むケースもあるでしょうが、そもそものビジネスモデルとしては、オーナーが自分自身で働かないとやっていけない仕組みになっているのです。



夫婦で月に500時間働いて、月収が40万円というようなケースもあります。時給を計算したら最低賃金を割っていて、『自分でバイトをした方がまし』といった話もよくあります」



オーナーは「独立した経営者」ではないのだろうか?



「どこのコンビニのフランチャイズ契約も、形式的には『準委任契約』となっています」



準委任契約は、相手に業務を委ねて任せる契約だから、本来はオーナー側の裁量が大きく認められるはずだ。



「しかし、加盟契約に詳細は書かれていませんが、店舗経営のマニュアルに従う契約となっており、本部が詳細に定めていて、オーナーに裁量はほとんどありません。



コンビニ加盟店のオーナー店長がやっていることは、本部に雇われている直営店の店長とほぼ同じです。



どこに違いがあるかというと、加盟店オーナーのほうは『最初に初期投資(加盟金を払って商品購入)をしている』という点ぐらいではないでしょうか」



経営努力で、なんとかできる部分はないのだろうか?



「コンビニのフランチャイズ契約は、キツい縛りがかけられていて、オーナーができることは限られています



本部は、リサーチで店舗にどのぐらいの商圏があって、どのぐらいのポテンシャルがあって、どれぐらい儲かるかを把握しています。



そのうえで、オーナー自身が働かないと儲けが出ません、というビジネスモデルになっているのです」



今回、東京都労働委員会が出した命令によって、状況は大きく変わるのだろうか?



「今回は東京都労働委員会の命令ですから、まだ中央労働委員会での再審査や、さらには裁判に至る可能性もあります



現在、岡山の事例が中央労働委員会で再審査がされていますので、そうした流れに影響はあると思います」



それでは、今後の見通しは?



「私たちは、フランチャイズ規制法の制定に向けて取り組んでいます。



加盟店オーナーやメーカー、物流業者などが厳しい状況に置かれる一方で、本部は大きな利益を上げています。



この問題は、日本経済としてそれで問題ないのか、という視点で考えるべきでしょう」


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
中野 和子(なかの・かずこ)弁護士
2000年からコンビニ・フランチャイズ問題に取り組み、セブン―イレブン、サンクス、ローソン、ファミリーマートなど加盟店側でコンビニ本部と訴訟を展開。前日弁連消費者問題対策委員会副委員長、元第二東京弁護士会副会長。

事務所名:シンフォニア法律事務所



    前日のランキングへ

    ニュース設定