政府は、介護や保育現場での人手不足を解消するため、介護福祉士と保育士などの資格を一本化する検討会を近く立ち上げると発表しました。この案を出すにあたり参考にしたのは、フィンランドが導入している「ラヒホイタヤ」です。「ラヒホイタヤ」とは、介護・福祉分野の共通基礎資格のことで、保育士や準看護士、ホームヘルパー、救急救命士など10の資格をひとつに統合したものです。
この資格を持っていれば「保育士として保育園で働いた後、ヘルパーとして高齢者のお世話をする」というように、ひとりで何役もこなすことができ、少ない人財を最大限に生かすことが可能だということです。
2025年に必要とされる介護職員の数は約248万人で、今のままでは約33万人不足すると推計されます。保育士も、2017年度末には約7万人も足りなくなることが予想されています。しかし、保育士に関しては少子化の影響でいずれ人数が過剰になるため、大幅に資格取得者を増やすのは難しいという現実があり、そんな双方の事情を勘案した結果がこの案だということです。
確かに、社会福祉法人などでは特別養護老人ホームと保育園を両方運営しているところも多いですが、だからといって1人の職員が両方のサービスをこなすことができるのでしょうか?
介護福祉士と保育士は、同じ対人援助でも対象となる人の年代が違いますし、必要とされるスキルもまったく異なります。さらに、高齢者では認知症、子どもでは障害児対応など専門的な知識が必要なケースも多々ありますので、いくら共通の基礎教育を受けたとはいえ適切な対応は難しいでしょう。
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人事労務の観点から見ても、課題は残ります。前述したように、必要とされるスキルが違うということは、評価の基準も異なるということです。事業主側がしっかりとした基準を持たないと、正しい評価を下すことはできないでしょう。特に介護職では、今でさえはっきりとしたキャリアパスを描けずに、漠然とした不安を抱えながら働いているスタッフが多いのに「介護職なのか保育職なのかもわからない」という中途半端な状態では、今以上にモチベーションを下げることにもなりかねません。
また、出所が違う報酬の財源をどうするのか、給与水準や休日数など、現在でもかなり異なる待遇面をどう調整していくのかなど、解決しなければならない問題は山積しています。介護と保育、それぞれの業界で人手不足は深刻さを増すばかりです。だからこそ、国は現場の声をきちんと吸い上げ、実効性のある制度を構築してほしいものです。
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