【書評】『身近な生きものの子育て奮闘記』から生きることの本質や家族のありようを省みる

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2015年05月07日 10:01  MAMApicks

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身近な生きものの子育て奮闘記:育児上手なオスはモテる!
(稲垣栄洋 著/筑摩書房)
子育てする家族のありようもさまざまな時代だ。
共働き世帯もあれば、専業主婦世帯もあり、単身赴任やシングル世帯もある。親元から離れた核家族だけでなく、三世代同居あるいは近居の家族もいるだろう。

その形態は、それぞれの家族における夫婦や親子間の人間関係と役割分担、稼ぎを得るための仕事や職場の状況、あるいはそもそも当事者たちが思い描いている家族観など、望む望まないに関わらず、その身を置いた環境の結果、各家族がたどった進化の過程であり、それはじつに多様だ。ましてや他人様のそれに、伺い知れない第三者が茶々を入れるなんてのは無粋でしかない。

いずれにしても人間って、家族という集団生活の最小単位ひとつをとっても、本当に複雑で悩みが尽きないな、と考えていたときに出会った一冊が、今回紹介する『身近な生きものの子育て奮闘記』だ。

生物学的に動物の生態を解説した書籍は数あれど、この一冊はとくに動物の子育て、それもオスのそれに焦点をあてている点で異色だ。著者は、動植物の生態をじつに人間味あふれる視点で考察した書籍を数多く書かれている、稲垣栄洋先生。現在は静岡大学大学院の教授である。

本書では、哺乳類はもちろん、魚類、両生類、鳥類、そして虫たちの子育てについて考察。その前段として、生物にとっての「子育て」について言及している。

たとえば動物園の人気者、ペンギンのなかでも「コウテイペンギン」は、「世界でもっとも過酷な子育てをする鳥」と呼ばれているらしい。

何しろ凍てつく南極の地面に卵が触れないように、メスが産んだ卵は、オスがそれを自分の足の上に移動させて、お腹の皮をかぶせて抱卵するそうだ。その後、メスたちは体力を回復するために、オスに卵を託してエサを求めて海へ向かって移動する。

その間オスはというと、じっと卵を温め続け、計4ヵ月ものあいだ絶食状態になるという。気温は氷点下60度、ブリザードが吹き付ける厳寒のなか、オスたちはじっと卵を守り続けるそうで、なんといじらしいこと……。

その後、産後の肥立ちのために長い旅を終えてきたメスたちが、ヒナに与えるエサをたっぷりとおなかに栄養補給をして海から戻ってきて、今度は交代で、オスがエサを獲りに海へ向う。見事な夫婦連携である。そして産まれたヒナたちは、保育園のように一ヵ所に集められて、群れの中で大切に育てられていくそうだ。

こんな調子で、ぜんぶで38種類もの生きものたちのユニークな子育ての生態と、オスの役割が、テンポよく紹介されていく。生きること、そして世代をつなげることに健気でピュアな彼らの姿には、ある種の感動をおぼえるとともに、改めて人間はなんて悩ましくて面倒くさい生きものなのだろうな、と省みることになる。

著者の稲垣先生にお話をうかがった。

「ほとんどの生きものが、子育てというものはできずに、たとえば産みっぱなしであったり、それも生存確率のために大量の卵を産んだりとか、つまり子育てができるということは強い生きものの特権なんですね。そしてオスが子育てする、つまりメスと子どもを守る力がある生きものというのはとくに珍しいんです。

動物たちはみんな、子育てをがんばっています。子どもを育てるというのは動物全般にとって重要なことなのですが、人間は動物のなかでも特別に頭がいいだけに、いろいろなことを考えて悩んだり迷ったりします。でも、そのほかの動物たちはとてもシンプルです。

自然界は動物たちにとって人間社会以上に厳しい一面があります。そんな厳しい進化の過程のなかで、動物だちは生きることに真摯で純粋です。彼らの姿からきっと、生きることの本質や子育ての役割というものを教わったり、あるいは励まされることもきっとあるのではないでしょうか。」

新聞紙面にも、生きものにまつわるコラムを寄稿されることがよくある稲垣先生。子どもをおんぶしながら育てるコモリグモのエピソードなど、奮闘する生きものたちの姿を記したコラムには、じつは母親たちからの反響も多いという。幅広く生きものたちに目を向けて、さまざま生きざまにまなざしを注ぎ、ときには例え話にも用いながら、自分たちの子育てや家族のありようを省みてみるのも悪くない。


深田洋介
学研で学年誌や幼児誌の編集者を経て、ネット業界へ。AllAboutで育児・教育ジャンルの立ち上げ、サイバーエージェントの新規事業コンテストでは子育て支援のネットサービスでグランプリ獲得。現在は独立して、子育て・教育業界×出版・ネット媒体における深い知識と経験・人脈を駆使して活動中。編著に『ファミコンの思い出』。

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