『結城友奈は勇者である』は、名匠・岸誠二監督と脚本家・上江洲誠のコンビによるオリジナルアニメです。今回ご紹介する「東郷美森」は、主人公「結城友奈」のパートナーにして、この物語の重要な鍵を握るキャラクター。お菓子作りが上手で、webデザインにも通じており、親友の友奈に名前ではなく「東郷さん」と呼ばせています(友奈との初対面で「かっこいい苗字」と言われたため?)。
【※一部、ネタバレの内容を含む可能性が御座います。ご注意下さい。】
■大好きな友奈のために
東郷さんが所属する「勇者部」は、普段は町のボランティアや便利屋的な活動をおこなっている部活です。しかし、その真の目的は、この世界を守る神「神樹」を祀る組織「大赦」に属する部長の「犬吠埼風」が、勇者になる素質を持った少女を集めることでした。人類の敵「バーテックス」が襲ってきた時にその真の目的を知らされた東郷さんは、バーテックスを見て怯え、勇者に変身することができませんでした・・・。
二度目のバーテックス襲来でも、東郷さんはその恐ろしさに竦んで動けません。しかし、敵に攻撃されピンチに陥る友奈を見て、足の不自由な自分に優しく接し、そしてずっと守ってくれていた大切な友奈を、今度は自分が守るのだと勇者に変身します。
■車椅子と記憶喪失
神へ犠牲を伴った供物を捧げることを「供犠(くぎ)」と言います。動物を生贄にすることもそうですし、ヒンドゥー教の行者の苦行も、自分のための鍛錬ではなく苦行そのものを神への捧げものとしているのです。日本でも人柱や人身御供といった人命を犠牲にする供犠がおこなわれていました。「勇者」に戦う力を与える勇者システムには、パワーアップ形態の「満開」という機能があります。満開を経た勇者は「散華」と称する肉体的な供犠を強制されます。
東郷さんは足が不自由で数年前の記憶の一部を失っています。東郷さん自身はそれを事故のためであると信じこまされていたのですが、実はそれもかつて東郷さんが、勇者「鷲尾須美」として戦っていた時に満開をしたために失ったものでした。
■そして、大好きな友奈のために
友奈と東郷さんはある日、元勇者の「乃木園子」に呼び寄せられました。寝たきりで包帯だらけの園子は実はかつての東郷さんの戦友で、二人は散華によって失ったものは治ることなく、勇者とはこの世を守るための神樹への供物に過ぎないと教えられました。
聡明な東郷さんは、園子との出会いで記憶の欠落の原因に思い当たります。東郷さんは神樹が守る「壁」の外に出てバーテックスはいくら倒しても復活してくることを知り、満開を繰り返すことで友奈が園子のような生き地獄を味わうくらいなら、いっそ神樹を破壊し、世界を滅ぼして友奈もろとも心中しようと決意します。
一度記憶を失った東郷さんにとって、再び記憶を失い友奈のことを忘れてしまうかもしれない可能性、そして友奈が自分を忘れてしまうかもしれないという可能性は何よりも恐ろしいことでした。止めに入った犬吠埼姉妹まで砲撃し、バーテックスを誘導して神樹を攻撃させた東郷さん。その前に立ちふさがったのは友奈。友奈に何度も何度も「忘れない」「そばにいる」と言われ、抱きしめられた東郷さんはやっと止まる事が出来たのです。
自らが放ったバーテックスを倒した後、東郷さんや仲間たちが散華で失った身体の機能は少しずつ回復していきましたが、友奈だけは意識が戻りませんでした・・・。時が過ぎ、東郷さんがすっかり不自由なく歩けるようになっても友奈は廃人のよう。耐え切れなくなって号泣する東郷さんの「一緒にいてくれるって言ったじゃない!」という魂の叫びが、友奈の心を引き戻します。
東郷さんにとっては大切なのは世界ではなく友奈だったのですね。しっかりもののようで危うい「東郷美森」。友奈と表裏をなすキャラクターだと思います。とりあえずもう、一生友奈と添いとげれば良いと思うのです。
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★記者:玄Kuro(キャラペディア公式ライター)
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