「労働組合」が学生に就活ガイダンス、実態に合わない「裁量労働制」の課題を語る

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2015年05月14日 20:21  弁護士ドットコム

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放送や出版、損保業界の労働組合が、就職活動を控えた学生たちに仕事の実態を語るイベント「『労働組合』だから話せる!業界リアルガイダンス」が5月14日、日比谷公園の野外音楽堂で開かれた。仕事の意義とともに語られたのが、長時間労働の問題だった。


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日本民間放送労働組合連合会(民放労連)の書記次長で、かつてテレビ朝日でニュース番組の制作に携わっていた岩崎貞明さんは、放送業界の実態について語った。



岩崎さんは、2008年のリーマンショック以降、番組制作費や現場で働くスタッフの人件費はどんどん減らされていることを指摘。安い給料で働かされて家にも帰れず、ソファで雑魚寝せざるをえないようなことも珍しくないことを説明した。



さらに、長時間労働に拍車をかけるものとして、裁量労働制を挙げた。裁量労働制が適用されると、実際に働いた時間にかかわらず、事前に労使で決めた「みなし労働時間」の分だけ賃金を支払われる。



放送業界でも、いくつかの会社では既に裁量労働制が導入されているが、岩崎さんは「確かに番組の企画などは、アイディア勝負という部分があるので、長い時間働けば必ずしもいい企画が浮かぶわけではない。そういう意味では、仕事内容に対する裁量はあるのかもしれないが、現場ではオンエアの時間という締め切りが秒単位、分単位で来ることを考えると、働く時間を自分の裁量で決められるとは言いがたい」と指摘した。



●出版業界「相手の都合で仕事時間が左右される」


ガイダンスには、大日本図書で教科書の編集に携わり、日本出版労働組合連合会(出版労連)で中央執行委員をつとめる石塚幸子さんも登壇した。



石塚さんは、「私たちの組合に加入している出版社については、裁量労働制が導入された会社はまだない。編集の仕事は、デザイナーやカメラマンなど、色々な人と関わりながら進めるので、相手の都合で仕事時間が左右される。



自分の裁量というよりは、一緒に仕事をする人の都合や、絶対に守らなければならない締め切りに合わせなければならない部分が大きい」と裁量がないまま、裁量労働制が導入される事への懸念を示した。



ガイダンスで司会をつとめた法政大学の上西充子教授は、「会社説明会に出てくる人事は、『こんなすごい事業やってますよ』とか、絶対にいいことしか言わない。労働組合だからこそ語れる、労働環境の問題や、それに対する取り組みといったことは、実は学生が知りたがっている。学生の目からはわからないことを労組が説明する機会を、様々な業界で設けてほしい」と語った。


(弁護士ドットコムニュース)


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