人間の記者はもういらない?「ロボット・ジャーナリスト」の「著作権」はどうなるか

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2015年05月16日 10:51  弁護士ドットコム

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ピューリッツァ賞受賞のジャーナリストやベストセラー作家の正体は「ロボット」だった。そんな時代が訪れるのだろうかーー。アメリカのニュース専門テレビ局CNNの日本語版が4月下旬、「記者はもういらない? ロボット・ジャーナリストの台頭」という記事を配信したのだ。


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記事によれば、ロサンゼルス・タイムズ紙やAP通信のような大手メディアでは、すでにロボット、すなわちコンピュータのソフトウェアが速報記事を作成しているのだという。アメリカには、記事や文書を作成するソフトウェアを開発する会社があり、メディアだけではなく金融系企業にも提供しているそうだ。



では、そんなロボット・ジャーナリストの作品の「著作権」は、いったい誰のものになるのだろうか。著作権にくわしい雪丸真吾弁護士に話を聞いた。



●ロボットに「思想」「感情」はあるのか?


「ロボットが『著作者』にならないことは明らかです」



このように雪丸弁護士は明言する。



「著作権法の2条1項2号で、著作者とは『著作物を創作する者をいう』と定義されています。また、著作物については同項1号で『思想又は感情を創作的に表現したもの』と定義されています。



しかし、ロボットにはそもそも『思想又は感情』がありませんので、何を制作しようが、その作品が『著作物』になることはありませんし、著作者にもなりません。



また、これらの点をおくとしても、ロボットが作成した記事自体が『著作物』と認められないという場合もあると思います」



●著作物性を否定された見出しやキャッチフレーズ


どのような作品が「著作物」として認められ、どのような作品が認められないのだろうか。



「一般に、誰が創作しても同様の表現となるようなありふれた表現のものは、創作性を欠き著作物とは認められない、と理解されています。制作された記事がそのようなものであれば、『著作物』とは認められません。



たとえば、新聞でよく目にする次のような著名人の死亡記事等は、著作物とは評価できません。



『(●●さん(●●社元社長)、●月●日大腸がんで死去,●歳,葬儀は近親者のみ。喪主は妻●●さん,後日●●社がお別れの会を開く予定。連絡先は同社広報室03−●―●)』



また、新聞記事の見出しやキャッチフレーズなどの短い文も、著作物性が否定されることがあります。近時の裁判例でも、次のように、新聞記事の見出しの著作物性を否定したものがあります。



新聞社のウェブサイトに掲載された『マナー知らず大学教授,マナー本海賊版作り販売』という見出しについて、コンテンツ制作会社のネット上のサービスに無断使用されたとして、新聞社が損害賠償を求めた裁判では、見出しの創作性が否定されています(知財高判2005年10月6日)。



また、英会話教材の販売会社が、次のキャッチフレーズが盗用されたとして、同業者を訴えた裁判があります。



『音楽を聞くように英語を聞き流すだけ英語がどんどん好きになる』


『ある日突然、英語が口から飛び出した!』



しかし、作成者の個性が現れていないとされ、創作的に表現したとは認められませんでした(東京地判2015年3月20日)」



このように雪丸弁護士は述べていた。



ロボット・ジャーナリストによって記事が作られるようになっても、著作権が認められるようになるには、まだ時間がかかりそうだ。


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
雪丸 真吾(ゆきまる・しんご)弁護士
著作権法学会員。日本ユニ著作権センター著作権相談員。慶応義塾大学芸術著作権演習I講師。2014年2月、実務でぶつかる著作権の問題に関する書籍『Q&A 引用・転載の実務と著作権法』第3版(中央経済社)を出版した。
事務所名:虎ノ門総合法律事務所
事務所URL:http://www.translan.com/


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