コレステロールを下げる「スタチン」高齢者使用時の費用対効果を検証

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2015年05月19日 06:30  FUTURUS

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FUTURUS(フトゥールス)

日本では、がんに次いで死亡率の高い病気・心筋梗塞。動脈硬化がその基本的な原因となることが知られており、予防のためには普段の食事からコレステロール値を抑制することが必要だ。ところで、コレステロール値を下げるために日本を含め世界中で使用されているのが、スタチン系の薬だ。このほどアメリカでは、高齢者に対し一次予防のスタチンを使用した際の費用対効果と人口への影響を検証した結果が専門誌で発表され、注目を集めている。

心疾患に関するマルコフモデルのコンピューターシミュレーション

Annals of Internal Medicine誌に掲載された、オレゴン州立大学のMichelle C. Odden氏を中心としたチームの研究では、2014年から10年間にわたるアメリカの75〜94歳の高齢者に対するスタチン使用の費用対効果と人口への影響を検証。全米健康栄養調査(National Health and Nutrition Examination Survey:NHANES)のデータと高齢者への試験結果を基に、“Cardiovascular Disease Policy Model (CVDPM)”と呼ばれる心疾患に関するマルコフモデルのコンピューターシミュレーションを用い、コストベネフィット分析を行った。

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原因をあたえる群とあたえない群で結果の発生状況の差を調べる介入のモデルは、LDLコレステロールが190mg/dL、160mg/dL、130mg/dL、糖尿病を発症、10年のリスクスコアが少なくとも7.5%、というものだ。

一時予防段階でのスタチンの使用は効果が高いが……

2014年の統計では対象となった75〜94歳の人々は1,900万人で、このうち30%が心血管疾患と診断。現在の比率から計算すると、次の10年間で250万人が心筋梗塞、310万人が冠状動脈性心疾患で死亡すると予想されている。

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研究チームは、対象者のうち脂質低下性の薬を服用している全ての人が処置を受ければ、新たに800万人がスタチンを使用することになるとした上で、約10.5万人の心筋梗塞発症、約6.8万人の冠状動脈性心疾患が予防できると結論づけた。障害調整生命年当たりの増分費用は2万5,200ドルとなり、高齢者に対する一時予防段階でのスタチンの使用は費用対効果が高いという。

しかしながら、使用することによって運動機能の制限や認知障害の相対リスクの増加もみられ、こうした老年特有の副作用の増加が心循環系への効果を相殺することになると指摘している。

今後、医療現場では、今回の研究を基にしたメリットやデメリットについての潜在的なデータが通知されることで、高齢者や家族が服用を慎重に決定する判断材料のひとつにできるようになるのではないだろうか。

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