40年以上前から知られていたアトピー性皮膚炎と黄色ブドウ球菌の関係
画像はリリースより乾燥肌とかゆみをともなう皮膚炎が慢性的に続くアトピー性皮膚炎。気管支喘息や食物アレルギー、花粉症などを合併することも多いため、アレルギー性の疾患と考えられています。しかし、原因となるアレルギー物質が何であるのかは不明のままでした。
今回、アトピー性皮膚炎が黄色ブドウ球菌を多く含む異常細菌巣によって引き起こされることが分かりました。これは、慶応義塾大学医学部とアメリカのNational Institutes of Healthの永尾圭介博士との研究グループが行った、マウスを用いた実験によって明らかになったものです。
実は40年以上前から、アトピー性皮膚炎患者の皮膚から細菌培養を行うと、黄色ブドウ球菌が多数発育することが知られていました。この現象が皮膚炎の原因なのか結果なのか長らく議論されてきましたが、因果関係を証明することはできていませんでした。
アトピー性皮膚炎のマウス、抗生物質でほぼ完治
今回の研究では、まずアトピー性皮膚炎のマウスを作成し、皮膚細菌巣を培養しました。すると皮膚炎の発症とともに、多種多様な細菌を含む皮膚細菌巣のバランスが崩れて多様性が失われ、黄色ブドウ球菌とCystericercus bovis(C. bovis)が多数を占める異常細菌巣に急激な変化を遂げることがわかりました。
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このマウスに離乳直後から異常細菌巣に効く抗生物質で抗菌治療を行うと、皮膚炎は発症しませんでした。さらに、離乳直後から治療せず皮膚炎を発症していたマウスに途中から抗菌治療を行うと、異常細菌巣が正常な細菌巣に変わり、皮膚炎はほぼ完治したのです。
一方、離乳直後から抗菌治療を行い、途中で治療をやめたマウスの経過を観察すると、それまで正常だった細菌巣は一気に黄色ブドウ球菌とC. bovisに置き換わり、激しい皮膚炎を発症しました。これにより、実験マウスのアトピー性皮膚炎は、偏った異常細菌巣によって起きることがわかりました。
アトピー性皮膚炎の治療は現在、ステロイド剤による炎症の抑制に頼っていますが、今回の研究結果により治療法が大きく変わる可能性があります。アトピー性皮膚炎に苦しんでいる人たちを救う根本的な治療法が確立されるかもしれません。(林 渉和子)
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