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赤外線は物を温めるのには役立つけれど、太陽光発電においては役に立たなかった。しかし、それが変わっていくかもしれない。
フィンランドのアールト大学の研究チームが、スペインのカタルーニャ工科大学と共同で行った研究で、ブラックシリコンを使ったソーラーセルで、22.1%という過去最高の変換効率を達成したという。同大学がウェブサイトで発表している。
赤外線もエネルギーにできる
太陽光にはさまざまな波長の光が含まれている。光の色のちがいというのは、その波長のちがいだ。可視光線のなかでもっとも波長が短いのが紫色で、それよりさらに波長が短くなると目には見えない『紫外線』となる。いっぽう可視光線のなかでもっとも波長が長いのは赤色だ。それよりもさらに波長が長くなると目には見えない『赤外線』となる。
そして、紫外線のほうがエネルギーが強く、赤外線はエネルギーが弱い。NEDOの海外レポートによれば、ソーラーセルは太陽光スペクトラムに含まれるエネルギーのうち 3/4 を電気に変換し ているが、通常のソーラーセルでは未だ赤外線スペクトラムのほとんどが利用されてい ないという。
しかし、ブラックシリコンは、その赤外線も含めた太陽光のほぼすべてを電気に変換することができる物質だ。その作り方もNEDOのレポートから以下に引用する。
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「ブラックシリコンは、硫黄含有雰囲気下でフェムト秒のレーザーパルスを通常のシリ コンに照射して製造されます」と、フラウンホーファー通信研究所ハインリッヒヘルツ 研究所(HHI)のStefan Kontermann博士は説明する。博士はこの研究所の光ファイバーセンサーシステムプロジェクト内の『エネルギー変換 用ナノマテリアル(Nanomaterials for Energy Conversion)』研究グループを率いている。
博士は加えて「これにより、シリコン格子の間に硫黄原子が埋 め込まれた表面が構築され、黒色の物質になるのです。」とも語っている。
表面再結合の問題を解決
そして、このブラックシリコンを使ったソーラーセルの効率を4%引き上げ、22.1%という新記録を得ることができたというのが、今回の発表だ。同研究チームは、ブラックシリコンのナノ構造の上に、Atomic Layer Deposition(原子層堆積)による薄い非反応性の膜を形成するとともに、セル背面に金属接点を組み込むことでこの成果を実現したという。
これまで『表面再結合』という現象が、ブラックシリコン・ソーラーセルの性能を制限する大きな要因になっていたという。しかし、このソーラーセルでは、表面再結合に対して感度の高い背面接点構造を採用したことで、その問題を解決したということだ。
また、この新しいブラックシリコン・ソーラーセルのメリットは、単なる変換効率だけではない。低い照射角の太陽光線を受けたときの発電力も高いのだという。これは、フィンランドのような高緯度の国での太陽光発電には特にメリットが大きい。太陽高度が低いからだ。
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今回実験に使われたソーラーセルは、p型シリコンを使っているが、このp型シリコンは不純物に関連した劣化が起こりやすいことで知られている。そのため、今後はn型シリコンやそのほかの構造でもできるようにしたいという。
現時点では、ソーラーセルによる発電量というのは意外と低い。化石燃料や原子力による発電を簡単に補えるようなものではないのだ。しかし、こういった技術開発を各国の研究者が行っている。やがてソーラーセルによる発電効率が大幅にアップし、サステイナブルなエネルギー源としての役割を担っていくことを期待したい。