ナノスポンジを含んだジェルが大活躍!? 抗生物質が効かないMRSAを駆逐する

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2015年05月23日 08:30  FUTURUS

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FUTURUS(フトゥールス)

最近の医療における技術革新に関わっていることが多い2つの研究テーマといえば、遺伝子関連とナノテクノロジーだろう。今回はそのナノテクノロジーに関連した話題である。

抗生物質が効かない危険な細菌『MRSA』に対して、ナノスポンジとジェルによる対処が効果的だというものだ。

毒素を吸収して取り除く

カリフォルニア大学サンディエゴ校の研究チームによる研究だ。同大学の『Jacobs School of Engineering』のウェブサイトで紹介されている。それによると、毒素を吸収するナノスポンジを含ませたジェルを開発し、それを皮膚に使用することが、『MRSA』の感染による傷口の治療に効果的だったという。

近代、細菌をやっつける抗生物質の発見によって、病気治療は大きく進歩した。結核をはじめとして、かつては“死の病”だった数々の感染症を治療することが可能になったのだ。しかし、『MRSA』はその抗生物質に耐性を持ってしまった細菌だ。そのため治療は非常に困難になる。

その『MRSA』に対して、ナノスポンジを含んだジェルが有効だというのだ。この方法は抗生物質を使うものではないため、抗生物質に耐性を持った細菌であっても関係なく効果を発揮するし、新たに耐性菌を作りだしてしまう心配もないという。

研究チームのリーダーであるLiangfang Zhang教授は、

感染への対処法は、細菌が作り出す毒素を取り除くことです。毒素は細菌にとって武器であると同時に、防御シールドにもなっています。毒素がなければ、細菌は弱くなり、無防備になるため、ほかの薬品を使わなくても人間の免疫力によってより簡単に殺すことができるようになるのです

という。

ジェルがナノスポンジの拡散を防ぐ

ここで使われるナノスポンジは、赤血球の膜にコーティングされたナノ粒子だという。『MRSA』の毒素は赤血球をターゲットにして働く。そこで赤血球のフリをしたナノスポンジが毒素を引き寄せ、血液中からそれを取り除いてしまうのだ。

しかし、特定の部位で細菌の毒素を十分に取り除くためには、多量のナノスポンジをその場に供給する必要がある。ナノスポンジだけではすぐに拡散してしまって十分な役割を果たせない。そこでジェルの出番だ。

水とポリマーを使ったジェルにナノスポンジを含ませることによって、多量のナノスポンジを一ヵ所に保持することができるのだ。研究チームは、マウスによる実験で、『MRSA』に感染した皮膚の傷にナノスポンジとジェルによる治療を行った場合、なにもしていない場合と比べて明らかに傷が小さくなることを確認した。

また、研究チームは、このジェルによる治療が、身体の内部においても有効だと発表している。皮膚の下に注射した2日後でも、ナノスポンジの80%は同じ場所にとどまっていたというのだ。もしジェルを使わなかったとすると、ナノスポンジは周囲に拡散し、2時間後には20%しかその場に残っていないという。

耐性菌の出現は、抗生物質の多用が原因ともみられている。今後さらに耐性菌が増える恐れもあるため、医療において大きな問題となっているが、このナノスポンジのような、抗生物質とまったくちがう手法によって、その問題が解決されるかもしれない。

ちなみに、風邪はおもにウイルスによって起こる。抗生物質はウイルスには効かないので、風邪に抗生物質は効果がない。一時期、風邪にも抗生物質を処方する医師がけっこういたようだが(筆者も処方されたことがある)、こういった乱用が耐性菌の出現の原因のひとつになったのかもしれない。

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