無駄な電波を回収してスマホの「バッテリーを30%長持ちさせる」装置

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2015年06月01日 06:20  FUTURUS

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FUTURUS(フトゥールス)

そんな“元気玉”みたいなことが現実に可能なのだろうか? 携帯電話が発する電波をキャッチして、自らのバッテリーに還元し、最大30%も電池を長持ちさせるという、にわかには信じられないデバイスをオハイオ州立大学の研究者が開発したらしい。近いうちに、クラウドファンディングのサイトで市販化のための資金を募集するというのだ。

携帯電話からでる無駄な電波を再利用する

『鉱石ラジオ』をご存じだろうか? ゲルマニウムラジオは電源がなくても聴くことができる。なぜか? ラジオが受信した電波のエネルギーで鳴るからだ。電波は微少ながら電力を持っているのである。したがって、電波をキャッチすることで電力を吸収することは一応可能ではある。

じっさいに、環境発電(Energy Harvesting)というのは、現在旬の研究テーマである。外部電源や電池を必要としないで機器を作動させることができるように、環境からエネルギーを採り入れる技術のことだ。ごくシンプルなセンサーなど、省電力のデバイスでは可能になっている。

しかし、オハイオ州立大学のウェブサイトで発表されている研究は、そんなものではない。携帯電話が発する自らの電波をキャッチして、それを直流の電力に変え、ふたたび携帯電話のバッテリーに戻すというものだ。

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携帯電話のケースの中にその機能を搭載することで、たいして体積も重さも増えることなく可能になるという。

携帯電話が基地局やWiFiルーターと通信するときには、かなりのエネルギーが無駄に使われています。私たちは、その無駄なエネルギーをバッテリーに戻してやるのです

と、Chi-Chih Chen准教授はいう。

空中から微量のエネルギーを集めるデバイスはありますが、私たちの技術は、エネルギー源から直接的に吸収しようという点で異なります。空中から集めても、マイクロワットやナノワット(1ワットの100万分の1や10億分の1)くらいにしかなりませんが、携帯電話はミリワット(1ワットの1,000分の1)以上の電力が必要ですから

とRobert Lee教授は説明する。

Lee教授の試算では、携帯電話からでる電波信号の97%は、目的地に到着せずにただ失われている。そのすべてを吸収できるわけではないが、そのうちの一部は取り込むことができるという。

交流を直流に変えるレクチファイアー

電力会社から供給される電源は交流(AC)だ。しかし、多くの機器では直流(DC)の電気を使用する。そのため、電気製品の多くは交流を直流に変換するレクチファイアーを内蔵している。あるいは、最近の小型の電子デバイスなどでは充電器のほうにレクチファイアーを備えている。

Chen准教授らが開発したのはそのようなレクチファイアーの一種だ。携帯電話が発している電波は、周波数の高い交流である。その交流電波の一部を取り込んで、直流にしてバッテリーに供給してやるというものなのだ。ただ、音声通話やデータ通信の品質を落とすほどのものではないという。

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携帯電話は、あらゆる方向に向けて電波を発している。それが最寄りの基地局やWiFiルーターと接続するために、もっとも手っ取り早い方法だからだ。しかし、そのためにかなり無駄な電波を発しているのも事実だ。

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Chen准教授たちは、無駄になっている電波を特定し、さらに、電話の機能を損なわない範囲で、最大限にその電波のエネルギーを採り入れる装置を作りだすことに成功したという。

ただし、このデバイスが働くのは、携帯電話が送信をしているときのみ。したがって、メールを送ったり、通話をしているときだけだ。だからオフラインでゲームをやっているようなときには関係がない。それでも、この装置は通話中やデータ通信中のバッテリー消費を最大30%も減らすという。

ホントにそんなことができるのか、筆者もまだ半信半疑だが、スマートフォンのヘビーユーザーには興味がある話題だろう。考えてみれば、わずか20年前に比べて、私たちの身のまわりには、電波を発する機器が爆発的に増えた。20年前は、WiFiもBluetoothもなかったし、携帯電話を持っているひともごく少数だったのである。

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そう考えると、我々の生活空間にはかなりの電磁波が飛び交っているはずだ。そして、そのほとんどが、だれにもキャッチされない方向に、無駄に発せられているのだ。

この記事を書きながら、もっとなんとかならないものかという気がしてきた。いずれこのジャンルのソリューションがもっと現れるかもしれない。ともあれ、まずはこのデバイスがクラウドファンディングに登場するところを見たい。

このニュースに関するつぶやき

  • 無駄な電波を吸収するより、無駄な電波を出さないようにすることの方が、変換がなくて、余計な電波もでなくて、効率的で自然界に優しいと思うのだがどうだろう…
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