スタンフォード大学が新たな燃費改善デバイスとしての「新炭素材」を開発

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2015年06月07日 11:10  FUTURUS

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FUTURUS(フトゥールス)

スタンフォード大学の研究者が『スーパーキャパシター』の性能を大幅に向上させる炭素材料の開発に成功したと発表した。

この炭素材料は前例のないレベルの非常に優れた電気エネルギー貯蔵容量を有するとしている。

電気二重層キャパシターこと、『スーパーキャパシター』は二次電池のような化学反応を伴わないため、急速充放電が可能で劣化が少ないことから、アイドリングストップや減速エネルギー回生システム搭載車の燃費改善デバイスとして注目されている。

環境にもよい長寿命の“スーパーキャパシター”とは

コンデンサーの一種で、リチウムイオン電池などに比べてエネルギー密度では劣るものの、出力密度で勝るほか、大電流での充放電繰り返しによる性能劣化が極めて少なく、寿命が長いなど優れた特徴を有しており、加えて構成材料に重金属を含まないため、環境に優しい利点も合わせ持っている。

Chemi_Con

自動車用途で期待が高まる

国内ではマツダが世界で初めて乗用車向けに『スーパーキャパシター』を開発、減速エネルギー回生システム『i-ELOOP』の名称で実用化しており、『アテンザ』以降、新型『デミオ』などにも搭載。

MAZDA

『i-ELOOP』はエアコンやオーディオ類など,走行中に必要な電力をほぼカバーしており、アイドリングの停止時間を稼ぐことで燃費低減に貢献している。

一般的な鉛バッテリーでは50A(アンペア)程度の電流なら蓄えられるが、減速エネルギーで生じる200Aの大電流を瞬時に蓄えるにはキャパシターが適していると言う。

ちなみに『スーパーキャパシター』では、電極にヤシ殻を原料とする『活性炭』が使用されている。

硬いヤシ殻を、高温の水蒸気で賦活(ふかつ)することで多孔質化、微細孔を数多く有する活性炭となり、この微細孔の表面積が大きいほど静電容量が高まるとされている。

リチウムイオン電池などの二次電池のように電極と電解液の化学反応によりエネルギーを蓄えるのではなく、物理的なイオンの脱吸着により容量が形成される。

Chemi_Con

電解液と電極の界面に極めて短い距離を隔てて電荷が配向する現象(電気二重層)を利用して活性炭表面におけるイオン吸着のみでエネルギーを蓄える仕組みだ。

ヤシ殻素材に代わる合成炭素材を開発

今回スタンフォード大学のゼナン バオ研究員は、エネルギー密度を高めるべく、ヤシ殻を使わず安価な化学物質とポリマーを使用して『デザイナー カーボン(designer carbon)』と称する高品質な炭素素材を得る手法を開発した。

その合成過程はソフトコンタクトレンズ同様、スポンジ状のポリマー『導電性ハイドロゲル』から始まるという。

Zhenan_Bao

ハイドロゲルポリマーは電気を通すのに適した3次元状に相互接続されており、炭素の電子物性を調整する窒素のような有機分子と機能原子を含んでいる。

研究チームはポリマーを極薄のカーボンシート状に変換するために穏やかな炭化&活性化行程を採用。

ACS_Central_Science

キャパシター最大の弱点“エネルギー密度”を向上

『デザイナー カーボン』は加工時の温度やポリマー、有機リンカーの種類を調整することにより、細孔のサイズや表面積を制御可能で、例えば加工温度を400度から900度に上げると細孔の容積が10倍に増加するそうだ。

これにより従来の活性炭では表面積が1グラムあたり約3,000平方メートルだったところを4,073平方メートルにまで拡大(アメフト競技場の3個分)、電気伝導率が3倍に劇的に増加して電力供給の安定性も向上する。

彼女の論文を掲載した『ACSセントラルサイエンス』によれば、従来の電池性能を上回る卓越したエネルギー貯蔵能力を持っているとしている。

これまでキャパシターの弱点とされていたエネルギー密度の向上が図れるとなれば、持ち前の大電流瞬時充放電特性と相まって、二次電池性能を上回る『スーパーキャパシター』の誕生となり、コストダウンの観点からも大いに注目される技術になりそうだ。

このニュースに関するつぶやき

  • (1) 「スーパーキャパシタ」はNECトーキンの登録商標 (2) 日清紡製HV用大容量コンデンサは10年以上前からトヨタの競技車両に搭載中
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