「尊厳死」と「安楽死」の違いは
日本は超高齢化社会に突入しました。長生きは喜ばしいことですが、重篤な疾患で回復の見込みがないまま延命措置だけがなされたり、また、認知症が進み周囲と意思の疎通もできないままに寝たきりとなってしまったりする高齢者が増えているのも事実です。
「尊厳死」や「安楽死」という言葉も聞かれますが、その解釈はまだ厳密ではなく、医療現場ですら混同されることも。そこで、日本病院会の倫理委員会が、日本尊厳死協会、大学教授、医師など意見交換を行い、尊厳死に関する考察をまとめました。
委員会は尊厳死を、「不治の病で末期の状態にある場合、自分の意思で無意味な延命措置を中止し、人間としての尊厳を保ちながら死を迎えること」とし、積極的な方法で死期を早める「積極的安楽死」とは区別し、医学的介入による積極的安楽死は容認できないとしました。
尊厳死についての国民的議論を
その上で、委員会では3つの結論を提示しました。1つは、健康なうちに自分の終末期医療や「安らかで自然な死」に対して意思表示することへの、国民全体での議論と理解の必要性です。自分で意見書を作成して意思表示を残しておくことを推奨しています。
2つ目は、がんの末期状態における緩和医療の推進を図るための体制や教育の整備。具体的には、患者の意思尊重、苦痛の除去、患者や家族、関係者の精神的ケア、医学部における緩和医療のカリキュラム化などを提案しています。
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3つ目は、認知症が進んだ状態での尊厳死については、国民的議論が必要だとしています。「人の安らかな死」とは、また、延命措置等による「人命尊重」について、一人ひとりが考えて答えを出すことが、求められているのではないでしょうか。(林 渉和子)
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