テキスタイル型のソフトなウェアラブルデバイスができる?東大が伸縮可能な導電性インクを開発

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2015年07月01日 18:40  FUTURUS

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FUTURUS(フトゥールス)

ウェアラブルデバイスも、近い将来“ソフトなもの”と“ハードなもの”に分けないといけなくなるかもしれない。東京大学大学院の研究チームが、布に簡単にプリントでき、伸縮性も持つセンサーや配線の技術を発表した。

1回のプリントで形成

現在さまざまなウェアラブルデバイスが注目されていることは、当サイトの読者の方ならご存じだろう。ただ、通常それらは“ハード”な装置を身につけるというものだ。しかし、スポーツ時や自宅でリラックスしているときにも使うならば、より軽く、身体にフィットする快適なもののほうが好ましい。これは、そのような“ソフト”なウェアラブルデバイスを可能にする技術だ。

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コアとなっているのは、“布地にプリントできる世界最高導電率の伸縮性導体”である。これは、新たに開発した導電機能を持つ新型のインクが可能にしたもので、布地に1回プリントするだけという簡単なプロセスで、高い伸縮性と高い導電性を持つ微細なパターンを形成できるというものだ。この技術を使って研究チームはスポーツウェア用の布地のうえに筋電センサーを試作してみせた。

テキスタイル(布地)型のウェアラブルデバイスの技術がこれまでなかったわけではない。高導電性樹脂でコーティングした繊維や金属粉体に浸して含ませた糸などをを使ったものはあった。しかし、それらの電子素材は、細かい複雑な形に並べることが困難だった。

あるいは、プリントタイプの伸縮性導体を開発した研究グループもあったが、それは10回以上の多層コーティングが必要で、やはり細かい形を作ることができなかった。

しかし、今回東京大学の研究チームが発表した技術では、伸縮性に優れるフッ素系ゴム材料を溶剤に溶かして、導電性粒子である銀フレークと界面活性剤を混ぜて作った導電性インクを使用している。それによって、1回で1層の伸縮性のある導体が形成できる。

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大きい面積にもプリントできる

試作した筋電センサーでは、スポーツウェア用の布地を基材として使用し、電極と配線を1回のプリントで形成する。さらに布地の裏側にも同様に導電性インクによるプリントをすることで2層の配線パターンが形成できる。

このとき、表裏の配線間を接続する場所に、あらかじめ小さな穴を布地に開けておくことで、2層間に電流を流すビア配線(複数の層の配線を接続する構造のこと)も形成できる。さら に、その電極から得られた微弱な筋電信号を有機トランジスターを使って増幅することで、非常に簡単に筋電センサーが作れるのだ。

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この技術は、短い時間でウェアラブルデバイスを製作することができるほか、大きな面積の布地にも簡単に適応できる。たとえば全身を覆うような多点のセンサーシステムを、テキスタイル型のウェアラブルデバイスで作れるようにもなるという。

そして、テキスタイル型のウェアラブルデバイスならば、日常利用での快適性を損なうことがないし、スポーツ時に要求される軽さや柔軟性も実現する。スポーツ、ヘルスケア、医療におけるさまざまな応用が期待されるという。

そもそも生体をモニターするセンサーは、身体にフィットしたほうが都合がいいものが多いので、テキスタイル型のウェアラブルデバイスというのは非常に有効だろう。持病があるひとの健康管理や、体調の急変のすみやかな察知、そしてスポーツにおけるトレーニングやケガ防止等の技術がさらに進歩するかもしれない。

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