子連れOKフェス、2015年の現状と希望

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2015年07月10日 10:31  MAMApicks

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7月になり、夏のロックフェスの話題がにぎやかになってきた。
筆者には生後半年に満たない乳児がいるためさすがに今夏の参戦は難しく、アーティストのラインナップをモニタの前で指をくわえて見ている状況ではあるのだが……。
ちなみに2年前に、このようなコラムを書かせていただいた。

子連れOKフェスが増えているのはなぜ?考察してみた
http://mamapicks.jp/archives/52121785.html

その後、ほかの媒体でも「子連れフェス」の話題が取り上げられたこともあり、筆者はなぜかラジオ番組で子連れフェスについてコメントするという展開にもなった。

昨年は自分が妊娠していてそれどころではなく、子どもも生まれてちょっと落ち着いたころ、そういえば今年のフェス情報はどうなっているのかと調べたら、おもに都心部の話ではあるが、比較的新しいフェスでも家族で参加することをうたっているものが見受けられた。

季節も春や秋に行われるものがあり、夏の炎天下に子どもを連れて行くのはなあ、というニーズにもあっているように思う。


■初めて開催されるフェスの注意点
今年、大半のフェスではサイトのQ&Aに子連れの際の注意点を見つけられた。
逆に言えば、Q&Aに記載があれば子どもを連れて行くことを主催側が拒否していないと取れるが、だからといって設備が充実しているとは限らない。

そもそも、初めて開催するイベントというのは、何が起こるか主催側も読みきれていない。そのハプニングも含めて家族で受け入れられるなら、きっと楽しめるだろう。

都心部の空き地で催されるフェス、というのもあるが、アクセスの悪い立地にある上、使用できる交通機関が限られ、自転車や車での来場が禁止というものがあった。この場合、子どものぐずりなどが発生すると、往復のチャーターバスが長蛇の列で混雑した場合、どうにもできなくなる。そのことは、頭の片隅にちょっとだけ置いておきたい。

■老舗ロックフェスの子連れ状況
では、子連れ客の受け入れに慣れているフェスとは何かといえば、7月に苗場で行われるフジロックフェスティバルと、8月に幕張で行われるサマーソニック(※)であろう。
※大阪はキッズエリア未設置

●FUJI ROCK FESTIVAL '15
2015年7月24〜26日開催
http://www.fujirockfestival.com/

アウトドアが大好きな家族であればフジロックを推したい。
キッズエリアのようすは公式サイトなどに詳しいが、森の中にメリーゴーランドが設置され、遊具や各種ワークショップなど、子どもも楽しいイベントが用意されている。

また、FAQには服装や持ち物の注意点がかなり細かく書かれており、まるで長年にわたり蓄積された「野外フェス知恵袋」のようである。

今年は『エビカニクス』でおなじみ「ケロポンズ」や、鈴木慶一率いる「ムジカ・ピッコリーノ メロトロン号の仲間たち」が登場予定。このあたりは子どもと一緒に音楽を楽しめるラインナップといえよう。

なお、都市型フェスと違い山間部であるため、子どもの体調急変などには注意したい。
余談だが、いずれのフェスにしてもチケットが高額な上に、子どもの体調は読めない。チケットぴあが導入している「チケットガード」のような保険商品がすべてのイベントで使えるようになれば親としてはありがたいが、どうなのだろうか。

●SUMMER SONIC 2015
2015年8月15〜16日開催
http://www.summersonic.com/

さて、去年はキッズエリアにサンリオの謎キャラクター「KIRIMIちゃん.」(ユニバーサルミュージックジャパンからCDをリリースしているアーティストである)も登場したサマーソニック幕張会場。今年もなにか現れるのか楽しみにしたいところだ。

サマーソニックのいいところは、屋内と屋外の両方にキッズエリアが用意されていることだろう。屋内ではボールプールや、DJブースの設置されたリトミック会場も。屋外ではロディなどの遊具のほかに、昨年はドラムサークルのイベントも開催された。

しかし両者とも託児ではないので、自分の観たいライブの時間帯にはもうひとり保護者をつけておかねばならない。また、子ども自身が好きなアーティストのライブを見たいとなった場合は、当然ここにはいられないということだ。

その場合だが、大人でさえ音量が心配なことがあるので、子どもには念のため耳を守るグッズを用意しておきたい。

最近は子ども用のイヤーマフや耳栓がネットで簡単に購入できる。少し大きい子であれば耳栓も大丈夫かと思うが、嫌がる子もいるだろう。子どもの持ち物に関してはほかのものでも同様だが、事前に練習して装着に慣れてもらったほうがいい。


ちなみにこちらの写真は幼児用だが、乳児向けのイヤーマフも売っているので、赤ちゃんにはそちらを用意したい。筆者の長男は肝心な現場ではなかなか装着せず、帰りの電車に乗ってからご機嫌で耳につけていた。子どもというのは、そういうこともある。

■アソビシステムの試み
きゃりーぱみゅぱみゅなどが所属している「アソビシステム」が新木場のageHaにて、子連れやティーンも楽しめるデイイベントを行うという。

●ageHa x ASOBISYSTEM Presents Bayside Dance Camp〜Summer〜
2015年7月19日開催
http://w.ageha.com/BDC/

ageHaといえば、最近では西武鉄道とコラボした「EDMトレイン」の印象が強いのだが、今回は子どもの来場を想定し、プールにはライフセイバーを配置するそうだ。(ちなみに筆者は30歳のころ、ageHaの入り口で外国人ガードマンに免許証を提示しても年齢を怪しまれた思い出がある)

そして、子ども相手だからといって、子ども向きな選曲を特にしなさそうなDJやアーティストのラインナップ。あえて言えば「TEMPURA KIDZ」が子ども向けソングをやるかも……という程度で、20代を“夜のクラブ活動”に費やした面々にはうれしいイベントになりそうな予感である。個人的には「水曜日のカンパネラ」のライブが気になるところだ。

公式サイトには記載がなかったが、ベビー休憩室がある旨がFacebookで告知されているので、行かれる方は事前に確認を。

■子連れをめぐる小規模音楽イベントの動きと未来へのささやかな希望
同年代の出産ラッシュもあり、子連れでいける音楽イベント企画が増えてきたようで、今年になってから2つほど乳幼児を連れて参加してみた。

いずれも小さいハコ(通常はクラブやライブスペースとして営業している)であったが、授乳スペースとおむつ換えの場所、子どもが遊べる風船などのおもちゃがあれば、だいたい大人も子どもも楽しめることがわかった。

子ども向けの選曲なんかにしなくても、大人が踊っていれば子どもは真似して勝手に踊るし(我が家の4歳長男はそもそも勝手に踊るタイプであるが)ジュースもおやつもある、風船も楽しい!となり、帰ってからしばらく「またあそこ行きたい!」とねだられていた。

4歳くらいになればトイレも大人用でなんとか用を足せるし、赤子のほうも授乳スペースがあるのでさほど問題はない。調乳用にお湯を提供してくれるイベントもあった。

予想外に人が入りすぎるとカオスになり、しんどい戦いを迫られるのも事実だが、小さいイベントにはゆったり過ごせるなど、そのよさがある。

欲を言えば、急な階段がないほうがいいとかベビーカーでいけると荷物がラクだな……とかはあるのだが、既存のクラブを借りてイベントを開催する以上、施設が子連れに向いていないという物理的な問題が発生する。


風営法改正に伴い、クラブの終夜営業が認められるとともにフロアの明るさに規定ができた今年。中学校ではダンス必修化という流れの中、先日はNHK・Eテレの『ムジカ・ピッコリーノ』でDJを紹介する回があった。

筆者が初めてDJが回すようなダンスイベントに出かけたのは中学生のときだったが、そのときの背伸びした感じや、そこに行けば新しい何かがあるというワクワク感、狭い音楽の話をしても分かり合える友だちができる楽しみは、15年くらい経ってもそのままで、ある種の居場所だったのかもしれない。

その後、90年代〜2000年代初頭に通った多くのハコはなくなり、店がつぶれるたびに思い出をひとつひとつ埋めてきた。

そして2015年である。
照明を明るく……というなら、いっそのこと“居酒屋のランチ営業”みたいに、子ども連れや子ども向けに適したデイイベントもできるバリアフリー施設は作れないものだろうか。

日中のキッズイベントが増えれば、ダンス必修化時代の子どもたちもダンスミュージックに親しめて、DJもそこに仕事があり、若いころクラブで遊んだ大人も同伴というテイで楽しめる。

いま自分たちが愛するカルチャーを子どもと一緒に楽しみたい、残したいと思うのならば、少なくとも「この場所は健全である」ということをアピールし、それをキープしていかなければならないだろう。

子どもが小学生になると、チケットを買えば同伴できるライブやイベントもぐっと増える。それまでの辛抱ともいえるが、そのころになると子どもがついてきてくれるかわからないし、お目当てのアーティストだって、今リスナーであるわれわれが投資をしなければ、その頃まだ現役かどうかわからない。

衰退気味といわれてきた日本の音楽業界であるが、定額制音楽配信サービスがぞくぞく登場し、盛り返し始めている。家で聴いてもいいが、子どもがライブに触れる体験は後に大きく影響するだろう。

小さい子どもにも音楽を楽しむきっかけをあげたいと思うのは、いけないことだろうか。そのためにはどうか、音楽シーンがうまく次世代に受け継がれ、盛り上がっていきますように。

ワシノ ミカ
1976年東京生まれ、都立北園高校出身。19歳の時にインディーズブランドを立ち上げ、以降フリーのデザイナーに。並行してWEBデザイナーとしてテレビ局等に勤務、2010年に長男を出産後は電子書籍サイトのデザイン業務を経て現在はWEBディレクター職。

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