診断確定までに約9年!指定難病となった「強直性脊椎炎」

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2015年07月24日 12:00  QLife(キューライフ)

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脊椎や関節の痛みが特徴、ただの腰痛と診断されるケースも

大阪大学大学院医学系研究科 運動器バイオマテリアル学 准教授 冨田哲也先生

 一説によると7,000以上にものぼるとされている「難病」。そのうち、ある一定の条件を満たした疾病は、国によって「指定難病」に認定され、医療費が助成されます。2014年5月、「難病医療法」と「改正児童福祉法」が成立したことを受け、2015年1月から、助成の対象となる難病が110に増加。その後196疾病が追加され、現在、306疾患に対して、助成が行われています。

 新たに助成の対象となった疾病のひとつが強直性脊椎炎(ankylosing spondylitis:AS)です。強直性脊椎炎は腰や脊椎の関節の痛みと可動制限が特徴とされる病気で、多くが30歳までに発症。進行すると関節の骨が癒着して体を曲げることができなくなります。「リウマチ性疾患」のグループに属しており、「HLA-B27」という遺伝子がこの病気の発症に関与していると考えられていますが、その病因は未だ解明されていません。

 日本における強直性脊椎炎の有病率は、0.004%と、きわめてまれな病気であることから、一般生活者はもとより医療関係者の間でもあまり知られていません。初期症状としては、腰や背中の痛みが多いことから、いわゆる腰痛と軽くみられてしまうことも。そのため、初めて症状が出てから診断がつくまでに平均でおよそ9年を要します。

強直性脊椎炎の長期予後を変える生物学的製剤「抗TNF製剤」

 日本脊椎関節炎学会理事で大阪大学大学院医学系研究科の冨田哲也先生は「強直性脊椎炎は体を動かすと痛みが取れるという特徴があります。しかし、この病気を知らない医師にそれを伝えると『それはおかしい。普通は運動すると痛くなるものだ』と言われ、さぼりたいだけ、怠けたいだけではないかとあしらわれてしまうこともありました」と語ります。

 これまで強直性脊椎炎の治療は、NSAIDs(非ステロイド性抗炎症剤)の服薬が主な選択肢でした。また、関節リウマチ治療薬のサラゾスルファピリジンも用いられていますが、体幹に病変が認められる典型的な強直性脊椎炎にはあまり効果がありませんでした。こうしたなか、強直性脊椎炎にも効果があることが分かり、「この病気の長期予後を変える薬剤」(富田先生)として注目を集めているのが、生物学的製剤「抗TNF製剤」です。

 高額な生物学的製剤を使った治療に助成がでることから、今回の強直性脊椎炎の指定難病認定は患者さんにとって、大変喜ばしい結果といえます。しかし、その認知度の低さから、いまだ強直性脊椎炎との診断を受けられず、痛みに苦しむ患者さんも多くいると考えられます。今回の指定難病認定を契機に、強直性脊椎炎という病気が一般により浸透し、患者さんの早期診断・早期治療が実現することが大いに期待されます。(QLife編集部)

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