「異常タンパク質」の蓄積と「誘導性オートファジー」の活性化
お腹がすいた状態が継続するとアルツハイマー病が進行してしまうかもしれない・・・。そんな興味深い研究成果が、東京医科歯科大学・難治疾患研究所/脳統合機能研究センター・神経病理学分野の岡澤均教授の研究グループによって報告されました。
アルツハイマー病を初めとする神経変性疾患では、細胞の内外に異常タンパク質が蓄積します。なかでもアルツハイマー病では、細胞外にベータアミロイドと呼ばれる異常タンパク質が沈着する老人斑と、細胞内にタウタンパク質が凝集する神経原線維変化が起こることが知られています。
これらの異常タンパク質を除去する細胞の機構として、自己貪食(自食、オートファジー)があります。これまでは、自食の中でも「誘導性オートファジー」と呼ばれる機能が、カロリー制限などで活性化して異常タンパク質の凝集を除去するとされていました。
過度のカロリー制限は、アルツハイマー病を悪化させるリスクに
アルツハイマー病では、このオートファジーが病態を抑制するのか、それとも進行させるのかといった問題点がありました。オートファジーは細胞内の異常タンパク質を除去するシステムのため、アルツハイマー病の病態を抑制すると考えられていたのです。
しかし、今回の研究では、オートファジーが活性化すると、異常タンパク質であるベータアミロイドを溜め込むだけで、十分に処理できないことが明らかになりました。アミロイドが溜まってしまうと細胞死を引き起こし、アルツハイマー病が進展してしまうと考えられるのです。
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つまり、過度のカロリー制限でお腹が空いた状態が続くと、アルツハイマー病を悪化させるリスクとなる可能性が示唆されたのです。このことは、今後、食習慣を通じた認知症予防・治療をさらに前進させるための重要な研究成果となるといえそうです。(林 渉和子)
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