「尊敬する人物を言ってください」「どんな本を愛読していますか」。こんな質問を就職試験の面接で受けたら、どう感じるだろうか? 滋賀県教育委員会の調査によると、2014年度に高校生が就職面接を受けた823社のうち、このような質問を受けていたケースが73社(全体の8.9%)あったのだという。
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滋賀県教委はこれらを「不適正な質問」としている。ほかにも、本籍や家族の職業など「本人に責任のない事柄、身元調査につながるおそれのあるもの」、愛読書、尊敬する人物など「本来、自由であるべきもの」を挙げている。
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調査結果によると、2014年度の不適正な質問の内訳は、家族構成・状況18件、住所・住所略図31件、愛読書17件、家族の職業・学歴10件、尊敬する人物4件、本籍地・出生地2件だった。
ネット上では「企業としては、思想信条とか宗教、親の職業や交友関係等々、それらこそ聞きたいことではないだろうか」と、企業側に理解を示す声もあった。こうした質問をすることに、法的な問題はあるのだろうか。労働関係に詳しい大川一夫弁護士に聞いた。
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「採用面接において、本人の労働能力と関係のない質問をすることは、問題です」
大川弁護士はこのように述べる。どういった点が問題なのだろうか。
「尊敬する人物や愛読書が何であれ、それは本人の働く能力とは関係がありません。
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そういう質問をすることによって、本人の労働能力と関係のないところで、採用・不採用を決められるおそれがあります」
法律で禁止されているのだろうか。
「法律上は、男女雇用機会均等法(性差別の禁止)や雇用対策法(年齢差別の禁止)で規定されているだけです。
しかし、そもそも憲法上の職業選択の自由、就職機会の均等という原則からしても、言われなき職業差別は許されません。
そのため、職業差別につながりかねない質問は、それ自体問題です。
現に、厚生労働省はもとより、各地方自治体においても就職差別につながりかねない調査や採用時の質問をしないように指導しています。
そのため、このような問題のある質問に対して、本人は答えなくても構いませんし、答えなかったことに対して、企業が不利益に扱うことも許されません。
企業が就活生に対して、質問に対する回答を強制したり、回答しなかったことを理由に不利益な対応をしたときは、場合によっては、応募者(企業)に損害賠償責任が生じる可能性もあります」
大川弁護士はこのように述べていた。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
大川 一夫(おおかわ・かずお)弁護士
大阪弁護士会所属、元同会副会長。
労働問題特別委員会委員、刑事弁護委員会委員など。日本労働法学会会員、龍谷大客
員教授。連合大阪法曹団代表幹事、大阪労働者弁護団幹事など。
事務所名:大川法律事務所
事務所URL:http://www.okawa-law.com
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