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大阪府寝屋川市の中学1年の男女が遺体で見つかった事件で、死体遺棄容疑で逮捕された市内の契約社員男性(45)が「黙秘」を続けている。報道によると、被疑者の男性は当初、逮捕容疑を否認し、「同乗者の男が女の子の死体を車から出して遺棄した」などと警察の調べに供述していたというが、その後、黙秘に転じたとされている。
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犯罪の被疑者に「黙秘権」があることは、テレビドラマにもしばしば登場し、一般的に知られているはずだ。しかしネットでは、「完全黙秘してるようですが早く喋ってください」「いつまで黙秘しとるんじゃ、イライラする」「黙秘権とかいらんだろう!」など、男性が黙秘していることについて、批判する声が出ている。
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そもそも、なぜ、犯罪の被疑者や被告人に「黙秘権」が認められているのか。なぜ男性は、警察の捜査に対し、黙っていることが許されているのだろうか。須見健矢弁護士に聞いた。
「刑事訴訟法は、『被告人は、終始沈黙し、または個々の質問に対し、供述を拒むことができる』と定めています(311条1項)。また、被疑者の取り調べに際して、『あらかじめ、自己の意思に反して供述をする必要がない旨を告げなければならない』と定めています(198条2項)」
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須見弁護士はこう説明する。
「刑事事件の被疑者が、取り調べに対して供述しないことができる、つまり『黙秘できる』のは、法律でこのように定められているからです。取り調べに対し、終始黙っていられる権利のことを『黙秘権』と言います。
黙秘権を侵害して得られた証拠は、裁判で使えません。また、被疑者が黙秘したことを有罪の証拠とすることもできません。これは供述の強要を防ぐためです。終始黙っていることについて、理由は全く必要ありません」
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どうして、そんなルールになっているのだろうか。
「黙秘権は、日本国憲法によって保障されている権利です。憲法38条1項は『何人も、自己に不利益な供述を強要されない』と定めています。
これは、仮に被疑者・被告人が有罪だとしても、自分にとって不利益になる供述を法律上強要することは、人格を尊重する上で許されない、という考え方に基づきます。黙秘したことをもって、法律上不利益に扱ってはならないのです。
また、黙秘権には『裁判の間違いを防ぐ』という側面もあります。被疑者が逮捕されたからといって、その人が真犯人であるかは分かりません。最終的に、裁判所によって有罪・無罪が判断されますが、捜査機関が有罪の証拠にしようと被疑者に供述を『強要』すると、被疑者がやってもいないことを話すおそれがあり、その結果、誤判が生じる危険が高まります。無実の者を処罰してはならないというのは刑事裁判の鉄則ですし、誤判を防ぐことは、社会全体のためでもあります」
須見弁護士はこのように述べ、「被疑者を起訴するかしないかを判断し、起訴した場合には、裁判で犯罪があったことを立証するのは、検察官の責任です」と話している。
報道によると、警察は防犯カメラ映像や被疑者男性の軽ワゴン車内から見つかった微量の血液反応の分析などを進めているという。こうした捜査でどこまで物的証拠が集まるのかが、事件解明の大きなカギを握っていると言えそうだ。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
須見 健矢(すみ・たけし)弁護士
2000年4月弁護士登録(東京弁護士会)。個人や企業間の契約や各種損害賠償等の一般民事事件、離婚や相続等の家事事件、刑事事件など幅広い分野で事件解決に取り組んでいる。
事務所名:わかばの風法律事務所
事務所URL:http://www.wakaba-lo.jp/
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