国内のデング熱流行から1年。あらためて学ぶ「デング熱とは?」

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2015年09月02日 12:00  QLife(キューライフ)

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国立感染症研究所主催のシンポジウムからデング熱の特徴や気を付けたいポイントを紹介

 蚊が媒介するウイルスによって感染するデング熱が国内で流行したのは1年ほど前のこの時期。そろそろ多くの人の記憶の隅に追いやられ始めているかもしれません。

 これまでデング熱は東南アジアを中心とする流行地で感染した人が帰国して発症する輸入例がほぼ全てと言っても過言ではありませんでしたが、2014年8月に69年ぶりの国内感染者が発見され、最終的に昨年判明した国内感染者は10月末まで160人にも達し、それ以降、新規国内感染者は報告されていません。

 これからは蚊の活動が活発化する時期で、一部には再び流行するのでは、との懸念も囁かれています。先日行われた国立感染症研究所主催のシンポジウムで専門家が報告した内容から、デング熱の特徴やどのようなことに気をつければよいのかをまとめてみました。

 まず、デング熱の原因であるデングウイルスは、1〜4型の4種類あります。ただし、1型に感染して体の中に抗体ができても、2〜4型への感染を防御できるわけではないことが特徴の1つです。

 やや鶏が先か卵が先かという議論にも似てきますが、このウイルスが血中で増殖しているヒトを刺した蚊が、ウイルスの混じった血液を吸血して別のヒトを刺した際にそのヒトの体内に蚊のなかに残っていたウイルスが入り込み、新たな感染を引き起こします。デングウイルスを持ったヒトと接触しただけで直接うつるわけではありません。

 デングウイルスを媒介する蚊にはヒトスジシマカ、ネッタイシマカの2種類が知られていますが、日本に生息しているのはヒトスジシマカ。基本的にヒトスジシマカは屋外で活動する待ち伏せ型の蚊ともいわれ、自ら積極的に人を刺しに来るのではなく、ヒトスジシマカのテリトリーに入ってきた人を刺します。

2回以上の感染はさらに注意が必要

 デングウイルスを持つ蚊に刺されて、症状が発症するまでの潜伏期間は2〜14 日(多くは3〜7日)で、典型的症状は38℃超の突然の発熱と頭痛、筋肉痛などの痛みなどで、これ以外によく現れる症状は、悪心・嘔吐や下痢。熱が下がっていく時に発疹や点状出血がみられることもあります。また、表面的には分からない変化としては、血液の中にある出血時に血を固める成分の血小板や体外から入ってきた異物を排除する役割を担う白血球の数が急激に減少します。

 もっとも、多くは致死的ではなく、過去の調査研究では少なくとも半数以上の感染者は無症状とも報告されています。その意味では、昨年の実際の国内感染者は報告以上にのぼる可能性があります。

 ただ、デング熱ではごく一部の患者でひどい出血症状や、より深刻な血小板数の減少、血管から血漿が漏れ出た結果を起こる腹水、胸水などをともなうデング出血熱に至り、さらに心臓や血管から臓器や組織に血液がうまく行き渡らなくなる循環不全を併発するとデングショック症候群という深刻な状態になります。

 このため国立感染症研究所ウイルス第一部第2室の高崎智彦室長は「デングショック症候群では、迅速な治療を行っても死亡率は12〜20%にのぼる。デング熱が疑われる場合は自宅安静にとどめず、速やかな受診と必要に応じて輸液などの治療を行うべき」と説明しています。

 ちなみに過去のデータからはデング出血熱などの重症は熱が下がってきたころになりやすいとされ、2度目以降のデングウイルス感染では一度目に比べてデング出血熱は10倍以上、デングショック症候群は100倍以上かかりやすくなるので注意が必要です。

対策にはヒトスジシマカの駆除という1点しかない

 さて、今年日本国内でデング熱が流行するかどうかは今のところ全く未知数です。ただ、昨年流行したウイルスがそのまま残っているという可能性は極めて低いと言われています。というのも、デング熱ウイルスを媒介するヒトスジシマカの日本国内での活動期は5〜10月で、成虫のまま冬を越せないからです。昨年10月以降、国内での感染報告がないのもこのためです。

 しかし、前述のように感染しても無症状の人もいるため、今のところ今年に入って全く国内感染が起きていないとも言い難いのが現状です。同時に昨年の流行以前にも実は密かに国内でのデング熱感染が起きていた可能性があります。

 というのも2013年9月にドイツのベルリンで発見されたデング熱患者の女性は、潜伏期間から逆算してデングウイルスを持つ蚊に刺されたと推定される期間に日本国内を旅行したことが分かっており、日本国内での感染が強く疑われているからです。

 日本への外国人観光客や日本からの海外渡航者が増えている現在では、ヒトスジシマカの活動期にはデング熱感染のリスクはなくなりません。その意味で感染予防策は蚊に刺されないことであり、究極的には蚊の駆除です。

 高崎室長も「対策にはヒトスジシマカの駆除という1点しかない」と強調しています。昨年の流行の際には最初の感染が起こったとみられる代々木公園で東京都が大規模な蚊の駆除を行っていますが、こうした行政の取り組みだけでなく、誰もができる駆除策があります。ヒトスジシマカの幼虫は放置空き缶など小さな容器に溜まった水でも生育が可能なので、身近な空き缶の片付けなどの環境美化に取り組むことです。

 身の回りの景観が改善され、なおかつ蚊に刺されることが少なくなるならそれだけでも快適な生活の一助になるでしょう。(村上和巳)

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  • 蚊って何かの役にたってるの?なんで生きてるの?なんで生まれてきたの?中韓人みたい。
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