【クルマを学ぶ】縁の下の力持ち「ブレーキ」その方式と特徴

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2015年09月06日 21:00  FUTURUS

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FUTURUS(フトゥールス)

自動車が停止するのは、主に摩擦ブレーキによるのは今も昔も変わらない。そのブレーキもいくつか形式があり、その特徴、セッティングによって随分と性能からフィーリングまで異なる。

今回は、改めてブレーキ形式とその特徴について振り返って学んでみたい。

ドラムブレーキ

自動車で、よく使われるドラムブレーキは、ドラムの内側にシューと呼ばれる摩擦材(ライニング)を貼り付けたパーツがあり、油圧やハンドブレーキのワイヤーにより、内側から外側へと力を加えることで、摩擦を起こしてブレーキをかけるものである。

効きが強力だが、非線形であったり、摩擦熱が逃げにくいことからフェード(過熱によりブレーキの制動力が落ちる現象)しやすい、といった特徴をもつ。二輪から四輪まで幅広く使われる形式であり、二輪ではフロント、リアともにドラムブレーキのものが残っているが、乗用車では、フロントはディスクブレーキに置き換わった。

ディスクブレーキ

現在、乗用車のフロントブレーキとして主流なのは、ディスクブレーキである。ディスクブレーキとは、ディスクの両面から摩擦材を貼りつけたブレーキパッドを、油圧ピストンで押しつけることで、摩擦力を発生させるものである。

ドラムブレーキと比較し、圧力に比例して摩擦力が立ち上がるために、線形な制動力が得られ、ブレーキフィールに勝るほか、放熱性がよいことからフェードにも強い。

ブレーキディスクは、放熱性をあげるため2枚を重ねて空洞を設け、空気を通過させることで冷却する、ベンチーレーテッド・ディスクがある。

また、穴をあけたりスリットを入れたりと、放熱性だけではなく、ブレーキパッドの汚れ(ダスト)をクリアにするための工夫がされているものも多い。

ブレーキキャリパーの種類

ブレーキパッドを1つのピストンで押し、もう片方をキャリパー本体で押しつけるものを片押し式(フローティング式、スライド式)と呼ぶ。比較的シンプルな構造で広く採用されている。

しかし、キャリパーがUの字型をしており、圧力をかけるとどうしてもUの字が開いてしまい、圧力の限界、耐久力の問題やブレーキフィールが損なわれることもある。そのために両方からピストンで押すものが、対向ピストンキャリパーである。

これは、両方からピストンがパッドを押しつけるために、強力な効きが得られることや、ブレーキフィールが良好となる。さらに、キャリパーの剛性を高めるために一体成型にした、モノブロックキャリパーがバリエーションとしてある。

ブレーキパッドとディスクの役目

ブレーキの形式は様々であるが、基本は金属と摩擦材に圧力をかけて制動力を生む。問題となるのは、この金属と摩擦材の素材や特性である。

一般的に日本車の場合、ブレーキディスクは非常に硬く磨耗しにくい。ブレーキパッドが磨耗することで制動力を生み出している。

一方、ヨーロッパ車の場合、ブレーキディスクも柔らかく、ディスクとパッドの両方が磨耗するために制動力は強力である。しかし、ブレーキダストと呼ばれる汚れが非常に多く、すぐにホイールが真っ黒になってしまうことも。

これは、ハイスピード巡航や急制動を繰り返すことが多いヨーロッパ車において、ブレーキの効きを優先させた結果である。日本車の場合、コストやディスク、パッドの耐久性を優先したために、このような違いが生まれている。

制動力で不満のある日本車でも、オプションでより制動力を高めたディスクやパッドを用意していることもあるので、気になる人は要チェックだ。

アンチ・ロック・ブレーキ(ABS)

自動車の電子制御として、早くに導入されたものがアンチ・ロック・ブレーキ(ABS)である。ブレーキがロックしてしまうと、制動距離が伸びることや、ハンドル操作が効かなくなることを予防するために、タイヤがロックした場合に、ブレーキ圧を一瞬解除し、タイヤを転がすことでロックしないようにする。ホイールにセンサーを組み込み、回転を監視していることから、今では車両安定装置(ダイナミック・スタビリティ・コントロール、DSC)などと合わせて、四輪の制御を行うシステムに発展している。

ABSの小型化が進み、二輪でも採用例が増えてきたが、今後自動二輪で義務化される予定である。

四輪ディスク VS リアドラム

ディスクブレーキはドラムブレーキに比べて性能が高く、見た目も精悍なため、高級車やスポーツカーだけではなく、大衆車でも四輪ディスク化が流行した。

絶対的な制動力や制御を考えれば、四輪ディスクが効果的なのは言うまでもない。しかし、その後コスト重視となり、リアドラムに戻っていったような経緯がある。

大径化するディスク、キャリパー

高級車やスポーツカー、ハイパフォーマンスカーでは、四輪ディスクが当たり前であるが、さらにそのディスク、キャリパーは大型化している。これは高い制動力を生むために、どうしても必要なことである。

例えば、日産『GT-R』では、前輪 390mm、後輪380mmのディスクを採用、キャリパーはフロント対向6ポッド、リア対向4ポッドと、車両重量とパフォーマンスに応じたブレーキシステムとしている。

大径のディスクを採用すると、その分重量が増加するため、ポルシェをはじめとするスーパーカーでは、ディスクを軽量なカーボン・ブレーキディスクを採用するケースが多い。

ホンダの新型『NSX』も、カーボン製ディスクを採用予定と言われる。

なぜブレーキ・システムが大切か

昨今、自動ブレーキ技術の開発が盛んで人気である。ところが肝心のブレーキ性能にはなかなか目がいかないのが実情だ。

どんなに自動ブレーキ技術がよくなろうとも、肝心かなめなのはブレーキシステムそのものであり、どんなにセンサーや認識技術で頑張っても、物理的にブレーキが弱いのでは止まりきれない。

フルブレーキの性能テストが、JNCAPによって行われているので、自動車選びの参考にするのもよいだろう。

(参考:自動車アセスメント・予防安全性能アセスメント・チャイルドシートアセスメント – 自動車総合安全情報

乗員、荷物、天候によって変わる制動距離

上記テストは限定された条件で行った結果である。実際は、乗車人数や積載している荷物の量、そして天候によって制動力は左右される。

例えば、キャンプ道具一式を満載、家族5人で雨の日にミニバンを運転する場合、普段の日にひとりで乗るのとは当然のことながら止まりにくくなる。

環境によっても制動力は変わってくるため、ドライバーは最新の注意が必要だろう。

是非このブレーキの仕組みや特性を理解し、安全な運転を心がけてもらいたい。

【参考・画像】

※ 製品・技術 – akebono

※ ブレーキ&トランスミッション – HONDA

※ 高速化を支えるカーボン製ブレーキディスク – HONDA

※ 二輪自動車へのABS(アンチロックブレーキシステム)の装備義務付け等に係る関係法令の改正について – 国土交通省

※ halfrain – Flickr

※ Oleksiy Mark – shutterstock

このニュースに関するつぶやき

  • ブレーキの性能が良かろうとも、タイヤの溝が無ければ能力は半減だよ。
    • イイネ!2
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